「マイノリティ相談室」

SCHOOL OF LOCK!


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今回の講義は、『マイノリティ相談室』
マジョリティ(=多数派)の中で、何かしらの苦労をしているマイノリティ(=社会的少数者)な生徒からの相談に乗ります。周りにはなかなか話せないという声を聞いていきたいと思います。



一郎先生こんばんは。
突然ですが僕はゲイで、友達との恋愛話についての相談になります。
友達と恋愛話になったときに好きな人は居るけど、詮索されそうなので今は居ないと言い、今は彼女も要らないと言ってやり過ごしてます。友達からは僕がどんな人を好きなのかわからないと言われ、タイプはどんな人なの?芸能人だと誰が好き?と聞かれ、どう言い返せば良いかわからず、濁してやり過ごしてます。
でも、僕も恋愛してるし、みんなと話して共有したいと思っているので、その場にいるときは凄くモヤモヤします。
こういったとき、どうすれば自分も楽しく過ごせると思いますか。

カサゴ
男性/20歳/千葉県


山口「20歳でゲイの男の子からの相談ですね。もしもし。」

カサゴ「もしもし。カサゴです。」

山口「メッセージありがとう。自分がゲイであるっていうことはいつぐらいから気づいたの?」

カサゴ「中学校3年生くらいの時です。」

山口「中3。きっかけは?」

カサゴ「きっかけは……その……」

山口「……大丈夫よ。」

カサゴ「一人でAVを見ていて、そういう時にふと、男の人ばかり見ているなって思って。」

山口「あー。その時に、あれ、おかしいぞって思ったってこと?」

カサゴ「そうですね。」

山口「それまでは全然自覚がなかったの?」

カサゴ「なかったですね。」

山口「いただいたメッセージを見ていると、自分がゲイであることを周りの人には言わないようにしているってことだよね?」

カサゴ「そうですね。誰にも言っていないです。」

山口「でも、恋愛相談とかされちゃうわけでしょ?」

カサゴ「そうです。ご飯を一緒に食べたりしている時に、「彼女できた?」とか。隠しているわけじゃないですか。それもまた、友達で仲良いのに言えないもどかしさっていうか。言う勇気が出ないっていうか……言ったらどう思われるんかなって思って、言えないです。」

山口「そうか。」

山口「ちなみに今好きな人はいるの?」

カサゴ「はい。」

山口「それは、彼氏?」

カサゴ「あー……男の人なんですけど、付き合ってはないです。」

山口「その人とは会ったりしているってこと?」

カサゴ「はい。週に1〜2回くらいです。」

山口「それは同世代の人?」

カサゴ「いや、40代の方です。」

山口「その人に相談したりする時はないの?」

カサゴ「……ないですね。」

山口「でも、同じ悩みを抱えている人に相談してみるっていうのもひとつの手のような気がするけどね。乗り越えているわけじゃん、そういう感覚をさ。」

カサゴ「うーん……」

山口「話したいなって思ったりする?家族に打ち明けたいなとか。」

カサゴ「お姉ちゃんとすごい仲良いから、こんな人がいるんだよっていう話はしたいっちゃしたいですね。」

山口「お姉ちゃんなら分かってくれそう?」

カサゴ「そうですね。最近すごい言おうか迷っているんですよ、お姉ちゃんにだけ。言ったとしても受け入れてくれそうな気がして。言ってもいいかなとは思っているけど、まだ悩んでいるって感じです。」

山口「お姉ちゃんいくつ?」

カサゴ「ひとつ上です。21歳。」

山口「なるほどね。」

山口「僕はちょっとカサゴとは違うけど、38歳で独身なのよ。結婚する気もなくて。子供もいらないかなって……いらないかなっていうか、責任取れないなっていう気持ちでいるっていうか。でも、人に頼りたくなる時とかってあってさ。なんかこう……ぽっと時間が空いた時とかに一人でいたりとか。ちょっと電話したいなとかさ。そういう時に、自分は結婚する気がないし子供もいらないのに、女性に頼るのってなんか……すごい申し訳ないっていうか。めっちゃ嫌な奴だなって思ったりするんだよね。それとは、カサゴの悩みとは違うかもしれないけど、結婚しなくて子供もいらない中年の男って、社会的に言うとそんなに多くなくてさ。むしろ38歳で独身ですって言うと、この人なんか問題あるんじゃないかって見られるっていうか……」

カサゴ「でも、それって……子供がいらないって思っている女性と結婚するって考えたらどうなんですか?」

山口「うーん……全部は僕、タイミングだなって思ってるんだよね。僕、人生で結婚しようって思ったタイミングって何回かあったんだけど、何人かと。でも、そうしなかったのはやっぱりタイミングなのかなって思うんだよね。多分、カサゴも今、二十歳で、自分の周りにいる人たちは大学の友達なわけでしょ?あと家族じゃん。でも、例えば、社会に出てもっと交友関係が広がったりするとさ、周りにいる人たちの考え方だったり、リテラシーとかも変わるはずじゃん。その時に初めて話そうって思えるタイミングがきたりするのかなって思うんだよね。」

カサゴ「はい。」

山口「だから、僕はなんか……嘘をつくとか、苦しいのもすごく分かるし、話せない葛藤っていうのも分かるけど、自分がここっていうタイミングっていうか、そこがくる時に話せたらいいんじゃないかなって気はするけどね。」

カサゴ「無理に話すんじゃなくてってことですよね。」

山口「うん。絶対にいつか話さなきゃいけないというか……誰かに気づかれたりとかさ。自分の心の中でひとつ引っかかりが取れてさ、話そうって思う瞬間がきたりとかさ。絶対にそういう時が、生きているとくると思うんだよね。その時にカミングアウトするのか、やっぱりしないってするのか選択すればいいんじゃないかなって気はする。僕だったらね。」

カサゴ「はい。」

山口「でも、それはカサゴが決めることだけど。」

カサゴ「はい。」

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山口「今回の新しいアルバム(『834.194』)聴いてくれた?」

カサゴ「はい。」

山口「そこで、マイノリティって歌っている「モス」っていう曲があるんだけど。」

カサゴ「はい、聴きました。」

山口「あの曲って、性的マイノリティだったり民族的マイノリティだったり、僕みたいなまたちょっとちがう社会的マイノリティっていうか……そういった人たちの観点っていうのを、露骨には歌わなかったけど、そこの枠っていうのをちゃんと歌にしたかったんだよね。でも……そういう、友達ができたりするといいんだけどね。」

カサゴ「……今の好きな人から、他のゲイの人とはあんまり仲良くなってほしくないって言われたんですよ。」

山口「あー……。」

カサゴ「僕が、「他のゲイの友達を作っていい?」って聞いたら、下心とかがあるのかなって思われたり。」

山口「それは嫉妬心ってこと?」

カサゴ「どうなんですかね……」

山口「もちろん好きだし、愛しているからこそ、そう言うんだと思うけど……不安だから、絶対に。カサゴのことを離したくないからさ。」

カサゴ「でも、一緒にいる時は楽しいから。」

山口「まあ、恋愛ってそういうものだからな。一緒にいる時は最高なのよ。幸せだしばっちりだけど、一緒にいない時に相手をどれくらい想えるかだからね。」

カサゴ「うーん……」

山口「……こんなことを僕が言っても何の説得力もないかもしれないけどさ(笑)。いやー、マジで。孤独の、孤高の戦士がこんなこと言うのもなんだけど(笑)。……でも、本当に好きで愛しているんだったら、カサゴが普通に自分のそういう悩みとかを聞いてもらう人が欲しいとか、好きな人にも聞いて欲しいし、同じこと考えている人たちがどう思っているのかをもっと知りたいっていう風に言ったら、「じゃあ、僕の友達を紹介するよ」とか、絶対広がっていくはずなんだよね。だって、好きな人が悩んでいたり不安に思っていたら、助けたいって思うのは当たり前じゃん。」

カサゴ「そうですね。」

山口「サカナLOCKS!に相談しちゃうくらい追い詰められているんだよっていう風に言ったら分かってくれると思うけどね。でも、分かってくれなかったら、ちゃんと分かってくれるまで話したりするべきかなと思うけどね。絶対に話した方がいいと思うよ。いろんな人と。」

カサゴ「わかりました。」

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山口「サカナクション好きな友達とかいる?周りに。」

カサゴ「あんまりいないですね。」

山口「例えば、Twitterでサカナクションのファンだっていうだけでつながっている人とかいないの?」

カサゴ「僕、去年サカナクションを好きになって……」

山口「あのね、サカナクションのファンってめちゃめちゃ優しいぜ。すっげーいい人ばっかり。絶対これを聴いている人の中で、同じことを悩んでいる人がいるからさ。そういう風にSNSを使うっていうのはありだと思うけどね。DMくれたりするかもしれないよ?それに、むしろそれを通り越した先輩がいるかもしれないしさ。」

カサゴ「はい。」

山口「でも、変な人が「会おうよ」とか言ってきたりするかもしれないけど、その辺はやっぱり自分のリテラシーじゃん。そこはちゃんと制御しつつ、これをそういうきっかけに使ってくれると嬉しいな。俺もたまに覗くよ、カサゴのTwitter。」

カサゴ「わかりました。」

山口「やっぱり、新しい人間関係で、最初から言える関係を作ると本当に楽だと思うよ。それが多分一番いいと思う。やっぱり、辛い時って人に相談したくなるもんね。それを音楽っていうところで作ると、僕も嬉しいけどね。」

カサゴ「はい。」

山口「言っておくから、口すっぱく。ファンのみんなに(笑)。「お前ら、カサゴを頼むぞ!」って。」

カサゴ「ふふ(笑)」

山口「優しいサカナファン。ライブが終わったあとにゴミを拾って帰ってくれる優しいファンだよ。言っておくわ。」

カサゴ「ありがとうございます。」

山口「まあ、またあったら連絡くれよ。Twitterでもいいから。ちゃんと見ているから。」

カサゴ「はい。」

山口「じゃあね、ありがとう。」

カサゴ「ありがとうございました。」

山口「バイバイ。」

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そろそろ、今回の講義も終了の時間になりました。

山口「やっぱり日本って……僕は東京にいて、自分の周りにもいるから寛容だって思っているけど、実際そういう人からすると、まだ言いにくかったりするんですね。でも、このラジオを聴いてくれているリスナーの人たちは、そういう人たちに対して変な気持ちを持っている人はいないと思うんだよね。音楽好きな人ってそうじゃない?……って勝手に思っているんだけど。だから、そういった人たちが普通に生活できる社会をみんなで作っていかなきゃいけないと思うし、僕は音楽でそういった環境を作れたらいいなって思う。今日カサゴの話を聞いてそう思ったし。自分の曲がそういう人たちにも届いているっていうのは改めて実感したから、妥協したものは作っちゃいけないなっていうのは強く思いましたね。」

「あと、カサゴに言われてハッとしたのは、子供いらないっていう女性と結婚するのは……まあ……ありなのかな……。そもそも人と暮らしたくないからな……人と暮らせないからな……。まあ、孤独と言うと寂しいですが、孤高と呼べば素晴らしい!……(笑)ということで、今回の授業はここまで。」

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