「Twitter『#衝撃を受けたサカナクションの歌詞』を考察」

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聴取期限 2019年12月27日(金)PM 11:00 まで


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山口「ちょっと前になるんですけど、Twitterで『 #衝撃を受けたサカナクションの歌詞 』っていうハッシュタグが盛り上がっていまして。で、僕もエゴサして発見したんですけど、結構面白かったんですよ、こういう風に見ているんだなーとか。トレンドにも入り続けたりしてすごかったですよね。エゴサするでしょ?(笑)してるぞ、洋平くんも、[Alexandros]の(笑)…… "ようぺ" で検索してるから!」

「今回は改めてそのツイートたちを見て、皆さんがサカナクションのどの歌詞に衝撃を受けたのか見ていきたいと思う!……というか、歌詞を書いた私が、みんながなぜそれが良いと思っているかっていうのを解説する!(笑)」

「これ、何をきっかけに盛り上がったんですかね?『#衝撃を受けたミスチルの歌詞』『#衝撃を受けたスピッツの歌詞』というタグもあるみたいですね。これ自体は1万ツイートされたと。同じ曲の中でも人によって選ぶ箇所が違うということで。ざっとリスナーがピックアップした歌詞を見てみましょうか。」

まずは「Aoi」を選んだ人たちは、歌詞のどの部分に衝撃を受けたのでしょうか。




「(歌詞の)"君はその若さを抱えては いつか通り過ぎて変わるだろう 変わるだろう 探すだろう その色は 深い青" この部分を挙げている人がいるね。……若いのかな?若さがあってね。でも、若さはいつかなくなってしまうだろうなっていう不安をこの歌詞から汲み取ったのかな。」

「"嗚呼 深く青いという絶高の世代で 痛いほど本能に踊って"……これはね、歌詞を書いている僕からすると、辛い思い出しか出てこない(笑)。ここ難しかったなー……みたいな。この「Aoi」っていう曲は、NHKサッカーのタイアップとして作った曲だったんですよ。そこを歌詞の内容に絡めているんだよね。"青い"っていうのは、日本代表のユニフォームが青いから。"絶高の世代で"とかは、代表内で世代交代をしていたじゃないですか。そこで今の自分たちの世代が一番良いんだっていう意味を込めてやったんだよね。」

「曲調も、高校生サッカーの「ふり向くな君は美しい」ってあるじゃない。あれを参考に「Aoi」を作ったんだよね。そう思って聞いたらそういう雰囲気ない?合唱の感じとか。僕はサッカーのことを全然知らなかったので、この曲を書くために、プレミアリーグ、セリエA、リーガ・エスパニョーラ、リーグ・アン……全部、超勉強しましたからね。毎日サッカー見て。サッカーってなんでテンション上がるのかとか、なんでガッツポーズするのかっていうエモーショナルな部分を自分でも理解できるためにやったんだよね。……大変でしたよ。」

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「次。「アルクアラウンド」を挙げたツイートね。」



サカナクション / アルクアラウンド

「"この地で この地で 今始まる意味を探し求め また歩き始める" この"地"は、実は血液の "血" だったんですよ、最初。」

「"僕は歩く つれづれな日 新しい夜 僕は待っていた"とか、"僕は歩くひとり 見上げた月は悲しみです 僕は歩くひとり 淋しい人になりにけり"って、これは、「荒城の月」をイメージして、歌の中に和の古さみたいなものを持ち込めないかなってトライして書いた歌詞だよね。」

「次、「enough」。僕も大好きな曲。」




「"嘘です が 嘘です"って……嘘じゃないよってことね(笑)。"僕は贅沢を田に変えて汗かく農夫になりたい 嘘です が嘘です 庭で死んでいた蝉を見ていつか一人になると知った 本当です 本当です その時にはどうか悲しみが僕に残っていませんように"って。これはラジオで話す話じゃないかもしれないんだけど、僕が初めて政治に対して自分がどういう考え方で、その考え方は政党でいうとこの政党なのかなっていうのを意識し始めた年齢の時があって。その時に自分がすごく仲良くしていた仲間が、普通に話したり、普通に遊んだり、普通にものごとを考えるときは同じなんだけど、政党として分けると違う政党を支持している人だったのよ。考え方は一緒なんだけど、そこになると急に変わるっていうことが自分の中でちょっと驚きで。自分の中にはなかったその考え方みたいなものを調べてみる必要があるなと。で、調べて行った時にこの曲の"僕は贅沢を田に変えて汗かく農夫になりたい 嘘です が嘘です"っていう、自分はどっちなんだろうっていう迷いみたいな歌詞になったんだよね。」

「北海道から東京に出てきた時に、登戸(神奈川県川崎市)に住んでいたんですけど、北海道って東京みたく暑くならないし、蝉も庭で死んでいたりしないんですけど、玄関を開けたら本当に蝉が死んでいて。その蝉を見た時にすごく淋しくなって。当時仲間と遊んでいたこととかを思い出してこの曲を書いたんだよね。」

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「次、「エンドレス」ね。」




「これは9ヶ月とかかかったんですよね、歌詞を書くのに。これは震災直後に、音楽を作るって、その時代のことをちゃんと反映したことを書かなきゃいけないなって思ったんですよ。アルバムタイトルも『DocumentaLy』っていうものにしていたから……今この時代を歌って、将来、10年後20年後30年後に、同じことになっていたとしても、それが改善されていたとしても、ちゃんと今のこの時代を写真のように状況を写実するっていうことが大事だなと思って「エンドレス」の歌詞を書いたんですよね。」

「YouTubeとかでコメント欄ってあるじゃないですか。映像を見てみんながコメントしていくんだけど「映像を見た後にコメントを見て自分の意見を決めているな」って思ったのよ。僕らの世代は、映画を観ても誰かとシェアするのは直接言葉でしかシェアしなかったし、最初に観た時に好きか嫌いかって自分で判断していたんだけど、今って誰かの意見を得て自分の感想を持っているなって思ったのよね。でもこれってこれから先ずっとこうだろうなって思って。誰かが何かを言っていて、それに対してまた何かを言う人がいて。そのエンドレスな形は今の時代から始まったから、これを写実しようっていうことで「エンドレス」の歌詞を書いたんだよね。"誰かを笑う人の後ろにもそれを笑う人 それをまた笑う人 と悲しむ人"っていうこの部分をツイートで挙げている人がいるね。この歌詞はみんな共感するっていうか……ネットの世界に触れている人はなるほどなって思う人は多いんじゃないかなって思うけどね。」

「次、「さよならはエモーション」ね。」



サカナクション / さよならはエモーション

「"そのまま 深夜のコンビニエンスストア 寄り道して 忘れたい自分に缶コーヒーを買った レシートは レシートは捨てた"っていうこれはもう……意味はないんだよね、気分だから。気分は人それぞれで余白があるじゃん。何も起きていないんだけど、感情が込められるっていうか、聴く人それぞれでいろんな感情が入り込めるっていうか。状況を説明することで空を作ってあげたって感じなんだよね。」

「……あれ、この話しましたっけ。この間コンビニで買い物をしてレシートを捨てたら、「レシート捨てるんですね」って店員に言われたの(笑)。こいつファンだなって(笑)。捨てるよ。」

「次は「白波トップウォーター」ね。初期の曲だね。」



サカナクション / 白波トップウォーター

「"悲しい夜の中で蹲って泣いてたろ 街の明かりが眩しくて 眩しくて"っていう歌い始めの歌詞を良いって言っている人もいるけど。「こんなにも自分の弱さをさらけ出して歌詞を書く人はあまりいない気がします」ってコメントがあるね。僕はこれを書いた時、本当に駄作だなって思ったの。こんなにわかりやすい歌詞は書きたくないと思ったんだよね。今見たらあれだけど……当時はまっすぐ書いたの。J-POPを書くぞって思って書いたのがこの歌詞だったんだよね。シンプルで分かりやすいじゃないですか、その分かりやすいっていうことは敵だって思っていたの。ひねくれていたのよ。今もそういう節はあるけど。一番尖っていた時に書いた曲ですね。」

「自分の中にあるポップ性っていうものは、自分で気づいちゃいけないんだなっていうのは最近気づいたかな。昔の曲を聴くと、ポップだなって思うんですよ。でも、昔はポップにしたくないと思って書いていたから。なのに今思うとポップだなって思うのって、すごいねじれているし、自分がポップなものを書こうって思って書くのって一番面白くない行為だなと思うんですよね。だから、自分の中にあるポップ性っていうものは、気づかないまま作り続けていくっていうことがロックバンドには特に必要なのかなと思う。気づいちゃうとそれで上限ができちゃうもんね。」

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「次、「シーラカンスと僕」ね。これは僕もすごい好き。」




「"眠れずにテレビをつけたら 夜に見たニュースと同じで 淋しくなったんだ"って、これ、ない?深夜ってニュースがぐるぐる回っているじゃん。僕、毎日アルバイトで深夜遅くて、家に帰ってきて、帰ってきたけど何かしたいみたいな。好きな子に電話するにも夜遅いし、どこかに出かけるにもお金もないし、次の日もまたアルバイトが大変だし……なんか悶々としていて。なんとなくテレビをつけると同じニュースがずっと繰り返されているっていうか。それは同じ気持ちの人がいるだろうなって思って。それを書いたんだよね。"曖昧な若さを 無理に丸め ゴミだとした どうか僕が僕のままあり続けられますように"って……この頃から自分はどんどん変わっていくんだろうなっていうのは感じていたよね。」

「あと、「ナイトフィッシングイズグッド」ね。」



サカナクション / ナイトフィッシングイズグッド

「"去年と同じ服を着ていたら 去年と同じ僕がいた 後ろめたい嘘や悲しみで 汚れたシミもまだそのまま"っていうね。昔はお金もないから、冬服を買ったら翌年もそれを着るじゃない、同じの。すると、去年と自分は変わったかなってそれを着る度に思ったんですよね。その時の自分の傷ついたこととかも、その服に染み付いているなってことを歌いたかったんですよね。これは東京にライブで北海道から出てきた時に、タクシーに乗っていて、タクシーの窓から見えるビルが次から次に移り変わっていく景色を見た、その時のことを書いた曲です。"何もない夜に 何かあるようなふりして 君に電話してしまうんだ いつも"って、自分が特別な人間のふりをするとかさ。そういう風に思うようにするとか。今日は何か絶対に起きるはずだって……何もないんだけど。そういう風な夜を毎日過ごしていたなって思いましたね。」

さて、今回の「#衝撃を受けたサカナクションの歌詞」講義も終了の時間になりました。

「僕が書いていた歌詞の意味や意図みたいなものは、みんなそれぞれ、僕が考えた通りじゃなくて良いんですよ。自分のタイミングでみんなに刺さってくれて、これがトレンドに入ってくれたり、バズってくれたっていうことは、苦しんで書いてきたり、自分が経験したことをみんなが受け止めてくれたっていうことだと思うので、すごく嬉しかったですね。本当にありがとうございました。」

「歌詞を書いている人間が、自分の歌詞のことを語るって実はそんなにかっこいいことじゃないなって気はするんですよ。僕、二重人格かなって思うくらい、歌詞を書いている時の自分と、普段の自分っていうのは乖離していて。自分で書いた歌詞なんだけど、一番近くにいる人が書いた歌詞っていう感覚なんですよね。昔は歌詞を書いている自分と生活している自分っていうのは一緒だったんだけど、今はなんか別人な感じがする。サカナLOCKS!にいる自分のキャラクターと、家でカップラーメンを食べている自分は全く別人だし(笑)。外に自分が出ていくっていうことは、もう一人の自分を見つけることなのかなって気はしますね。作るっていう自分と、それを伝えるっていう自分の両方の深度を深めていくっていうのが40代の自分のテーマかなって最近思っています。本当に、皆さん、サカナクションを愛してくれてありがとうございます。」

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