映画音楽

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今回の音学(おんがく)の授業、テーマは『映画音楽』です。映画『バクマン。』の劇中音楽を担当して、日本アカデミー賞・最優秀音楽賞を受賞したサカナクション先生。映画の中で流れる音楽は、どんな役割を担っているのでしょうか。実際の『バクマン。』のサウンドトラックを聴きながら、解説していきます!まずは、山口先生が先週の生放送教室に参加したことを振り返ります。

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山口「まず先週は、生放送教室にお邪魔しまして、2時間とーやま校長、あしざわ教頭と一緒に授業をお届けしましたが、いろんな話をしましたね。生徒諸君の悩みを電話で聞いたりしてね。先生方は、"NF"というイベントを開催していまして、名古屋、大阪でも未成年が参加できる時間帯に開催しました。これね、先生にもすごく刺激的な時間でしたよ。まず、僕の隣に12歳の男の子が居ましたからね。で、一緒にアフロビートのフェラ・クティ(Fela Kuti)っていう人がいるんだけど……

♪ Zombie / Fela Kuti

……これこれ!これ、フェラ・クティの「Zombie」。みんな、知ってるか?ちょっと日本の民謡っぽいところもないか?フェラ・クティはナイジェリアのおじさんだぞ(笑)。音楽で歴史や政治を変えようとした素晴らしいミュージシャンなんだ。これを聴きながら12歳の男の子が僕の後ろで踊っていたんだ。すごいぞー。多分、そんな経験した事ないんじゃないかな?みんな。そういう空間をみんなと一緒に楽しんだというのは先生にとって刺激的だった。サカナLOCKS!の生徒も何人か来ていたんじゃないか?一緒に踊ったのは本当に良い時間だったぞ。」



NF1R名古屋
こないだ、父さんとNF行きました!!!笑
クラブイベントは初めてでしたし、クラブミュージックは全然知りませんでしたが、すごく楽しかったです!また名古屋来てください…
サカナ厨
女/16/愛知県




「これは……!この子のクラブデビューを奪っちゃいましたね。お父さんと来るっていいねー。お父さんも踊っていたのかな?一緒に踊ってたらいいね。なかなかそういうのないですもんね。」

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「そして更に7月17日、我々サカナクションは、JOIN ALIVEという北海道で行なわれるフェスの後に、オールナイトイベント、SAKANA TRIBEを開催致します!」



サカナトライブ
家族全員で行きます〜!とっても楽しみです!
ふじかれ☆
女/16/北海道




「これは家族全員で来てくれるということですね。一緒にキャンプをするのかな?家族行事として僕らのNFのイベントを楽しんでくれるというのはすごく嬉しいな。家族って、弟とか妹もいるのかな?その辺も楽しみですよね。楽しみにしていてください。」

「野外で音楽を聞くっていう体験って、あんまりみんなしたことないんじゃないかな?先生は、20才を過ぎた頃でしたけど、よくあったんですよ。北海道だったんですけど、RISING SUN ROCK FESTIVALとかね。オールナイトでずっと踊り続けて、明るくなって、終わるのが嫌だって。……音が鳴り終わった瞬間の静寂ね。これもまた気持ち良いんですけどね。そういうのをみんなと一緒に体験したい。みんなとこれから音楽体験をいっぱいできるように、サカナクション先生たちは頑張っていきますので、一緒に音楽で遊んで、音楽で踊りましょう!」

サカナクション先生が開催するイベント
・5月20日:『NF 3LDK』@東京 恵比寿LIQUIDROOM
・7月17日:『SAKANATIRBE』@北海道 いわみざわ公園(グリーンランドホワイトパーク頂上&北海道グリーンランド遊園地)

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それでは、今夜の授業テーマにいきましょう!

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「今夜は、映画音楽についての授業をお届けします。サカナクション先生は、映画『バクマン。』の映画音楽を担当して、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞しました!ワー!ドンドンドン!パフパフ!(笑) これは、どういうことかと言うと、ロックバンド初なんですよ。個人とかはあるらしいけど、バンドで受賞したのは初らしいですね。あと、授賞式に行かなかったっていうのも初。音楽賞はね。なので、結構快挙らしいんですけど。……なのに、音楽メディアが一切取り上げてくれない!取材が無いぞ。先生、寂しいぞ……。でも、これは快挙だったので、いろんな事を体験しました。それを生徒諸君にお話ししたいと思います。映画全般の音楽という言い方で、生徒諸君は分かるかな?映画で使われている音楽全部だな。劇伴って言うんだ。それをサカナクション先生は担当して、全部作ったんですね。」

「映画にとって音楽がどういう役割を担うのか……それは、実はサカナクション先生も知りませんでした。作ったことがなかったからね。でも、今回担当させてもらったことで、いろんなことが分かりましたね。音楽っていうのは目で見えないし、手で触れないものなんですよ。でも、映画は目で見えますよね。だから、目で見えているものを、音楽で背中を押すというか……空間を作ってあげる。そういった役割に音楽があるんだなっていうことも分かりましたし、音楽で台詞を邪魔しちゃいけないな、とかね。音楽が大きすぎると、台詞が聞こえなくなったりするので。」

「あと、環境音。例えば、学校の教室のシーンだとすると、机がぶつかる音だったり、他の生徒が話をしている音とか、がやがやしている様子も環境音に含まれていますね。それに対して音楽も入ってくるわけだから、同じ帯域……音がぶつかり合う部分があると、何のこっちゃ分からなくなると。そういったこともあるんですよね。音楽が支える場合もあるし、邪魔してしまう場合もあるので、それをバランス良く整えていくのが映画音楽の役割なんじゃないかと先生は思いましたね。」

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「音楽がない映画も、もちろん存在すると思うんですけど、映画の中で音楽があるということで、その映画のカルチャー感とか、時代感、世界観みたいなものがより濃く反映されて、如実に出てくるものなんじゃないかな。例えば、『ジョーズ』のテーマ曲とかね。ターラン、ターラン……って、あの音楽だけで、あのシーンが思い浮かんだりしますよね……

♪ 『ジョーズ』のテーマ 「人食鮫(メイン・テーマ)」

おぉ……この音ヤバいっすね。もう、海の底から1匹のでかいホオジロザメが……近づいてきてる……ヤバい……!逃げろ……助けてくれ……!助けてくれ……!!

……ははは(笑)。みたいなね!これは、『ジョーズ』の音楽が流れると、その映画のシーンがパッと思い浮かんだりする、その世界観を構築するものとして音楽が映画に色を付けているっていうこともあるんじゃないかと思います。」

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「映画音楽の作り手は、どういう風に発注を受けるのか。先生はまだ、長編映画の音楽は1つしか担当していないので、先生たちが受けた方法しか分からないんですけど、先生たちは大根仁監督に「とりあえずデモを何曲か下さい」と言われて台本だけ渡されました。どんな映像がくるのかとかは全く分からない状況で、とにかくいろんなジャンルの音楽をセッションで作って、大根監督に送りました。そしたら、大根監督が編集過程で、映像にその音楽を当てて送り返してくれたんですね。それを見ながら、ここの音楽をもっとこうして欲しいとか、ここは良いですとか、ここに音楽を当てたいんだけど曲が足りませんとか……そういう風にディスカッションをしていって、詳しい部分を詰めていきました。」

「でも話を聞くと、音がない映像がバンとあって、音を当てていくやり方もあるらしいし、ディスカッションをして音楽の世界観を詰めていく場合もある。ただ、僕らは映画音楽のプロではなくバンドなので、今回はこういうやり方を大根監督が使ったんじゃないかなと思いましたけど。僕ら的には、自分たちの好きなものを最初に作れたので、楽しくやれました。」

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「それでは、映画『バクマン。』の劇中で使われた音楽を聴きながら、どういうシーンで、どういう音を作っていったのかというのを説明していってみましょうか。」

♪<オープニング>
0'04"〜 (※シングル「新宝島」の豪華初回限定盤に付属していた、【CD2】「MOTION MUSIC OF BAKUMAN。」の収録TIMEです。)

「これはオープニングですね。主人公の2人が、週刊少年ジャンプの集英社に向かうところです。そこから、ジャンプというのはどういうものなのか、歴史的に解説するようなシーンがあるんですけど、そこで使われる音楽です。「始まり感」と「勢い」みたいなものがこの音楽には必要だったんですね。でも、この音はデモ音源の段階からそんなに変化ないですね。最初に大根監督に送ったものが映像に当てられて、そこから微調整したくらい。サカナクション的にこの音楽を作ったときのイメージは、ただ好きなものを作っている感じで、4つ打ちの、生バンドテクノをやってみよう、みたいな。ただ、これ以外に10曲以上も短期間でばーっと作っていったので、出す音色もその場の即興で決めていったりしたし、コード感もただセッションでやっていただけで。草刈も生ベースから途中でベースシンセを弾き直したりとか。結構好き勝手にやって遊んでいたような感じでしたね。」

♪<叔父さん>
(26'11"〜「MOTION MUSIC OF BAKUMAN。」より)

「これはね、この映画の中でも最も音楽的に暗いテーマですね。主人公のサイコーの叔父さんのテーマとして作られた曲なんですけど。これは、シーン的にも結構暗いシーンだったんですよ。なので、楽曲的にもそういったニュアンスが感じ取れるものを作らなきゃいけないなと思って、ハピっていうプロパンガスのお尻を切って楽器にしたものがあって、それを使って演奏をして録音したんですよ。だからこれは、プロパンガスのお尻を叩いているようなもんですよ(って言ってもプロパンガスって10代の生徒は知ってるかな?)。結構アジアのオリエンタルな雰囲気が出ていて、それをどこか暗さとコミカルさみたいなものを混ぜ合わせてこういったニュアンスにしました。これもほぼセッションですね。本当は、これに笙(しょう)という和楽器の音とか、いろいろ入っていたんですけど、「怖すぎる」って言われて(笑)、その音を抜いたりして。それは監督の判断で間引かれたり、逆に、足されたりしていきました。これが1番ミニマルな状態ですね。」

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♪<マンガを描く>
(16'37"〜「MOTION MUSIC OF BAKUMAN。」より)

「これはね、主人公の2人がマンガを描いているシーンです。サーッという音は、実際のペンでマンガを描いている音なんですけど、愛美ちゃん(ベースの草刈先生)とか、エジ(ドラム江島先生)とかが、ペンを買ってきて、それでカチカチしている音を録音して、それをリズムにしていく……そして、キックが入ってくる。そういったチャレンジを監督に提案したところ、それはすごく面白いってなって。あと、これはCG(コンピューターグラフィックス)がたくさん入るシーンだったんですね。なので、結構早めにここの音が欲しいということでした。音に合わせてCGを作っていくということだったので、音を作っていく上で結構デリケートになったところだったかな。CGって結構時間がかかるんですって。だから、音に合わせたりする場合は、結構初期段階から動いていないといけないって。でも、僕らがデモでもらっていた感じから、できあがった映像は全然違ったし、迫力が増していたりして。CGの技術もまた面白い世界だなって思いました。あと、お金がかかりそうだなって思いましたね。でも、こういう風にインストを作るっていうことは、僕たちの好きな音楽のバックグラウンドが出てくるので、ダンス・ミュージックだったり、生演奏でやるダンス・ミュージックや、完全に打ち込みのもの……5人の雰囲気が出ていたんじゃないかと思いますね。」

♪<バトル>
(19'14"〜「MOTION MUSIC OF BAKUMAN。」より)

「そしてこれが、映画の中で最も激しくて目立つシーンの音楽ですね。エイジっていう漫画家と、主人公の2人がペンを持って戦い合うっていうシーンなんですね。これは映画の中で読者アンケートの人気投票数を争っているシーンを、実際に肉体的な、フィジカルな表現でみせていったっていうシーンだったんですけど。和太鼓の音を使おうって話をして進めていったんですけど、1番迫力のあるところですね。だから、キックの音色も結構迫力があるし、音階もちょっと怖いもの、鋭さがある曲調になっていますね。切なさみたいなところもキーに現れているんじゃないかなと思いますけどね。」

「ということで、こんな風にたくさんの音楽を作っていったわけですけど。……なんかねー、映画の内容によって曲調とかも変わるわけですよ。アクションのシーンがある映画もあれば、全くない映画もあると思う。先生はこれからもチャンスがあればいろんな映画の音楽をやってみたいと思いましたね。あと、メンバーもすごく楽しそうでした。大変だったけど、すごく頑張ってましたからね。メンバーのためにもこういった、CDやライブをするだけではない音楽の伝え方を体験していって欲しいなと。先生はサカナクションのファンとして(笑)、そう感じましたね。」

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「ここで、生徒のみんなに宿題を出したいと思います!

『好きな映画音楽を答えよ!』

……みんな、映画観るか?映画館に観に行ったり、家でDVDやBlu-ray、インターネットのストリーミングサービスで観ている人もいるんじゃないかな。生徒諸君は、映画を観る時に音楽をどれだけ意識しているのかを知りたい。なので、好きな映画音楽や、好きな映画主題歌を先生に教えてください。このシーンのこの音楽が好きとか、詳しいところも教えてもらえたら先生はすごく勉強になるかなと思うし、みんな聞きたいんじゃないかと思う。あと、この映画にこの主題歌がぴったりくるっていう理由みたいなもの……こういう内容で、こういう歌詞があるから、そのリンク具合にぐっときているんです、とか。もっと感覚的に、映画のテイストに合っている!とかね。是非その理由も書いて教えていただけたらなと思いま……

教えていただけたらじゃない!
これは、授業なんだ!

……宿題なんだからね。帰ってきたサカナLOCKS!は、びしびし行くよ。たくさん宿題を出して、生徒諸君と一緒に勉強していけたらと思います。」

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「あと、こういう宿題を出して欲しい!とか、意見があったら教えてください。それと、サカナLOCKS!は、無条件で作品を募集します。歌がある音楽でも、無い音楽でもいい。年齢も性別も関係ない。作った音楽をサカナLOCKS!に送ってください。素晴らしい音楽があったら、サカナLOCKS!で紹介したいなと思いますね。そういう授業の回を必ず作っていきたいと思います。常に募集しているので、作ったらどんどん送ってきて。ひょっとしたらオンエアはされないけど、一郎先生からレスポンスがあったりする可能性もあるのでね。是非応募してください。[ サカナ掲示板 ]への書き込みもお願いします。それも先生見ているのでね。メールで送ってきてもいいです。宿題の提出と、これからのサカナLOCKS!をよろしくお願いします。」

■ サカナLOCKS!の宿題の提出は、[ ⇒コチラ ]から!

ちなみに去年の10月、ゲスト講師として、映画『バクマン。』の監督、大根仁(おおね ひとし)先生が来てくれました。一郎先生との対談授業をお届けしましいたが、その中でも映画音楽や主題歌についての話が出てきます。こちらもどうぞ!

映画『バクマン。』対談 (w/ 大根仁監督) - 前編

映画『バクマン。』対談 (w/ 大根仁監督) - 後編

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サカナLOCKS! 放送後記

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