2016年を一文字で表すと、"夢"

SCHOOL OF LOCK!


山口「はい、授業を始めますから、席に着いて下さい。マンガを読んでいる生徒は、マンガをしまいなさい。Twitterを開いている生徒は、Twitterを一度閉じなさい。Instagramを開いている生徒は、Instagramを一度閉じなさい。では黒板書きますよ。」


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「毎年、今年の漢字というのが発表されていますね。今年は"金"でした。この"夢"という字は、僕、そしてサカナクションの2016年を一文字で表した漢字です。

今回は年内最後の授業ということで、一郎先生が2016年のサカナクション、そして山口一郎について、振り返っていきます。映画『バクマン。』のサントラでアカデミー賞を受賞、音楽&カルチャーイベント「NF」そして初のオールナイト野外イベント「SAKANATRIBE」開催。パリコレの音楽を担当、「多分、風。」発売、そしてCM出演……などなど、たくさんの出来事があった今年。一郎先生が感じていたことや、音楽について、じっくりと話していきます。

「2016年がどんな年だったかというと、サイレントマジョリティっていう言葉があるじゃないですか。ものを言わないマジョリティ……つまり、Yahoo!コメントに書かないし、YouTubeのコメント欄にも書きません、Twitterにも投稿しないし、そういう批判や批評をしないっていう……そういう人が減った気がする。サイレントマジョリティが少なくなった年だなって感じました。それは、SNSだったり、何か発言するっていうことに対して抵抗がなくなってきているのかなって思いましたね。あと、発言しやすいものや共感を得やすいものに対して発言力が高まっている気がする。だから、不倫問題とかありましたけど、ああいうのにみんなが一斉に意見を言いやすいのは、自分の周りにも起こり得ることだから意見しやすいし、発言しやすいことだったからかなと思う。メディアがインターネットで盛り上がっているものを取り上げるっていう順序がはっきり変わったなって思いましたね。何も発言しないサイレントマジョリティもいますけど、ノイジーマイノリティっていうのもいて、批判だけするマイノリティの層もいるって言われているんですけど、TwitterとかInstagramとか、Yahoo!コメントとかを見ると、リスナーだったりそれを受けている人たちが、批評家になっている時代なんですね。つまり、それがまるで国民の総意として受け止められるんじゃないかと思うんだけど。」

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「例えば、マイノリティが作り上げたランキングが世の中のランキングになっているんですね。正直、ミュージシャンがこんなことを言うのは良くないかもしれないけど、2016年に入って特にCDが売れなくなっている。つまり、CDを買う人って本当に音楽が好きな……そのアーティストを応援している人だと思う。CDを買うマイノリティな層、つまり変態たち(笑)……よい意味での変態ね。その人たちが作ったランキングなのよ。つまり、マイノリティのランキングなのね。でもそれをメディアが「流行っているもののランキング」として発表するわけ。マイノリティが作りあげたランキングが世の中のランキングになっていて、それを元に流行っている/流行っていない、聴く/聴かないっていう。……そういうことが音楽の層だけじゃなくて、いろんな部分で起きているなって思いますね。」


「世の中の外に出る仕事をしている人たちって、全てを見せようと思っても、やっぱり見せられないんですよ。TwitterやInstagramで今何をしているよとか、いろんな人と話をするよ、とか、そういう機会はあっても、完全にプライベートをさらけ出すことはしないでしょう。ちらちら見えるからこそ全てが見たくなる。そして、そこに対していろんな意見を言う人たちが出てきたり、チラッと見えていて触りやすいものにみんなが触れている……そういう風潮になっているんじゃないかと思いますね。」

「意見を言うってことは、そのことに対して知識がないと本当は言っちゃいけないんじゃないかなって気がちょっとするね。もちろん、犯罪とかはだめだと思うけど、その人の立場にならないと分からないことってどんなことでもあるじゃん。そういう歪みやひずみが社会の中に漂っている気がするの。無駄なものとしてね……だけど、その無駄なものがなくなってしまうとつまらなくなってしまうんじゃないかなという気もするな。2016年は特にそれを感じ取れたなって思いますね。」

「だけど、音楽っていうのはそういう時代を反映するものだと思うんですよ。時代の空気を代弁するものだと思うし、みんなにとって、すごく遠いお話をしても、理解ができないから音楽を聴く気にならないと思うし。かと言って、同じ目線すぎてもそんなの理解できてるし、って聴かなくなると思うのね。だから、より一歩先……手を伸ばせば届く距離のことをミュージシャンは音楽にしようとすると思うんですよ。いつか僕は、"音楽を作るのはミュージシャンでもメディアでもなくリスナーだ"って言ったことがあったんですけど、それですごく誤解もあったんだけど、リスナーが何を求めているか……つまり、リスナーが時代だと思うから。そういった人たちに向けてミュージシャンやメディアが動いているっていうことを聴き手の皆さんも理解するときっといろんな音楽の見つけ方や生き方が発見できるんじゃないかと思うし、音楽はそのきっかけになったりするべきだなと思うんです。」


「最近思うんですけど……「世界を変える1曲」が、もし今、日本で生まれても、今のこの時代だとそれで世界は変わらないんだろうなって思う。世界を変えるということを理解できないし、それに対する様々なものすごい意見が漂うし。あと、人に知られるっていうことを恐れるミュージシャンも出始めているし。だから2016年を振り返ると、本当にこれから音楽を作ったり、ものを作ったり、人に何かを届ける職業をする人は、すごく難しい時代になっていくんだと思うし、その分、逆に今この時代に生まれたっていうことは面白い時代に生まれたんじゃないかなとも思います。」

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「僕が書いた"夢"っていうのは、先生は今年、腹をくくったことがありまして。……話が長くなっちゃうかもしれないんだけど、サカナクションっていうバンドを来年でもう10年やってるんですよ。前回、サカナクションの『sakanaction』っていうアルバムを作って、いろんなインタビューでも言ったんですけど、ある程度メンバー4人に対する責任は果たせたかなって思ったのよ。ベースの(草刈)愛美ちゃんとかザッキー(岡崎英美)とか、女の子だけど、北海道から東京に、バンドをやるって連れてきたの。なんとか頑張って、愛美ちゃんは結婚して子供ができて、家族を作ることができたし、ザッキーもちゃんと生活ができるようになっているし、他のメンバーもそう……ある程度のところまでちゃんと責任を果たせたかなって思ったんです。その次に、僕が何に対して音楽を作ったり、どういうことを歌っていったらいいのかなっていうのを真剣に考えなきゃなと思っていたんですね。自分が作るべきものを考え始めていったんです。僕って本当に幸せ者なんですよ。音楽でご飯が食べられているわけだから。皆さんがライブでお金を使ってくれたり、少ないお小遣いからCDを買ってくれたり、汗水垂らして働いたお金から僕らの音楽を手に入れるために使ってくれているわけですよね。それで僕は生活できているわけだからすごく幸せだし、正直十分なの、もう。贅沢する気もないし。だけど、バンドを辞めるとかいう話じゃないよ。じゃあこれをなんとかしてみんなにお返ししたいなっていうのが今の僕の2016年に見つけた夢なんですよ。ただお返しするって言っても、物を贈るとかそういうことじゃなくて、体験だったり、空間作りになると思うんだけど。僕がこの状況に入れることで知ること……例えば、みんなが会えない人に会えるとか、いろんな人から話を聞けるとか、音楽のみんなが知らない部分を知れるとか……代わりに僕が体験して、それをみんなの体験にフィードバックできるようなことをやりたいなと真剣に色々考え始めています。」

「実は僕、HIP LAND MUSICっていうマネジメント事務所の方たちにお手伝いしてもらいながら、自分の会社を作ったんです。株式会社NFっていうイベント会社なんだけど。綺麗事を言うとまたあれなんだけど……そこでなんとかみんなに音楽でお返しできたらなって。口だけじゃなく、実現していきたいなと思っているんです。Twitterとかでエゴサーチしていると見るんだよね。「一郎さんはビジネスビジネスってそんな話ばっかりする」とかさ。……確かにそうなんだけどさ。ロックバンドって永遠にい続けるわけだからさ。やっぱりロックバンドが持つ夢も時代に合わせてちゃんと本気でアップデートしていきたい。ロックってなんだろうとか、時代に合わせて考えていくようなミュージシャンでいたいし、ちゃんとマジョリティの中のマイノリティとしてみんなに音楽を届けていきたいなっていうことを真剣に考えています。」

「あとね、僕は何も変わっていないから。ひたすら音楽のために……もちろんたまにはサボるけどね(笑)。これが今の僕のモチベーションなので、頑張っていきたいと思うし、そのためにもサカナクションでみんなに良い曲を届けていきたいなと思います。それがないと僕がやろうとしていることは達成できないんでね。だから、今サカナクションを応援してくれている人たちの期待にも応えたいし、未来……音楽を聴く子供達のためにも真剣に音楽を作っていきたいなと思います。だから2016年の一文字は"夢"。そして、2017年の一文字も"夢"と書きたい。今は夢「抱く」だけど、2017年は、夢「叶える」にしたいなと思っています。」


ということで、音を学ぶ『音学(おんがく)』の授業、今年最後のオンエアもそろそろ終了の時間になりました。

「でもね、やっぱり伝えるって難しいなと思う。何を言ってもいろんなことを言われるし。勝手にいろんな想像をされるしさ。僕はリスナーやファンの人たちと距離を近く持っていろんな話を聞きたいけど、距離を近づけるといろんなことを言う人もいるし、難しいんだよね。だけど、先生はそれを時代が解決してくれると思ってる。自分が間違ってないと思って一生懸命進んでいかないとね。前に進めないかなと思うんですけど。みんなが学校で勉強を頑張ったり、仕事を一生懸命頑張って苦しい思いをするように、僕も音楽でしっかり前を向いて戦っていますから。一緒に頑張ろうねっていうことを今年最後の放送でお伝えできたらと思いました。本当に2016年はすごい年だったと思いますよ。そして、2017年……2020年、オリンピックがある年ね。どんな年になっているのか楽しみですね。だけど、僕らが時代を作っていくのでね。聴いている皆さん、あなたたちが時代を作っていくんですよ。」

「ちなみにね、私は12月31日 LIQUIDROOMでDJすることになったんですよ。石野卓球さんの前に。カウントダウン前ですよ。これは凄い緊張する場面だよ。30日COUNT DOWN JAPAN 16/17に出て、31日LIQUIDROOMでDJをして年を越すわけですよ。あと、先生は、来年の目標は年に1枚アルバムを出して1ツアーする!……これは絶対に守る。リリースしないとみんな忘れるっていうことが分かったから(笑)。だから頑張って目標を守っていきたいと思いますよ。だからって手を抜くわけじゃないよ。頑張っていきたいなと思います。ということで、今年最後の授業はここまで。」

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