サワカリー先生


「国のない男」
カート・ヴォネガット(著)

「すべての物事がつじつまが合うものであってほしいと思う。
そうすれば、われわれはみんなハッピーになれるし、緊張しなくてすむ。
だからわたしは嘘をいくつもついてきた。
そうすれば、すべてが丸く収まるし、この悲しい世界を楽園にすることができるからだ。」

(カート・ヴォネガット「国のない男」より引用)

つじつまの合わないこと。

たとえば、大好きなあの人を、親友に奪われた理由。
たとえば、誰にでも優しいあの人に、不幸が襲った訳。
たとえば、この世界に、争いが存在する意味。

これらに対する、美しくて楽しくてオモシロい答を、
生み出す(デッチあげる)ことができるか。

悲劇を悲劇で終わらせない知性。
この世界のつじつまを合わせるための嘘。
それこそが、“笑い”であり、“ユーモア”だと。

そう教えてくれたのが、この作家。
というか、僕は彼の作品から、勝手にそれを学んだ。
(そもそも、読書とはそういうものだと思う。どんな本にも、何かの答を求めている人にだけ、輝いて見える一行が存在する。)

何でも笑って済ます人は、信用できない。
絶望ばっかりしている人とは、手を繋ぎたくない。

でも、絶望を知りながら、笑うことを選んだ人には、
いろんなことを教えてもらいたい。

カート・ヴォネガットは、そんな人だ。
偉大な作家にして人間にして“先生”。

その“生徒”には、世界中の表現者たち。
日本人でいえば、村上春樹さんや爆笑問題の太田光さんなど。

2007年4月11日に死去。
この“国のない男”が、生前最後の著作。
簡単に読めるエッセイ集だから、本を読むのが苦手な人にも読んでほしい。

もしこれをきっかけに、ヴォネガット大学の生徒になったら、
次は“スローターハウス5”、その次は“タイタンの妖女”… いや、別に作品は何でもいい。
“先生”の小説も読んでみてほしい。

そして、そこで得た知性をもって、大切な人を笑かしてほしい。
誠実な愛と勇気をもって。

ユーモアは、キミが愛する人を幸せにするために存在するんだ。