ケータイ・インターネットの歩き方

「著作権編」

 インターネット上には、様々な作品が配信されています。音楽やマンガ、小説やゲームなど、人が創作した作品にはどんなものにも著作権があります。著作権は有名なミュージシャンや作家、画家などだけに認められているものではなく、自分自身が書いた文章やイラスト、音楽などにも生じます。インターネットを利用するにあたり、著作権についてしっかり学んで、ルールを守り上手な使い手になりましょう。
1.著作権って?
 音楽やマンガ、小説、ゲームなど、作品を作る人を著作者と言います。著作者は、自分の作品を利用する人に「使ってもいいよ」と許可したり、「使わないで」と禁止したりすることができます。また、「使ってもいいけど、次のような条件を守ってね」と条件を出すこともできます。作品の利用を許可したり、禁止したり、また、条件を付けたりすることができる権利を「著作権」といい、その内容は著作権法という法律で定められています。この法律によって権利が認められている作品を著作物と呼びます。
 著作物は、作者の考えや気持ちが作者なりの方法で表現されたものであるがゆえ、著作者の意向が重視されますので、自分や友だちが書いた文章、絵や写真、音楽、習字、Webサイトのデザインなど、様々なものにも著作権があることを知っておきましょう。
2.なぜ著作権を守らなければいけないの?
 他人のものを使いたいときは、あらかじめその人に許可をもらうのがルールです。他人のものを勝手に使ってはいけないのと同じように、著作物を使う場合にも著作者の許可が必要です。自分の作品を無断でコピーされたり、多くの人に勝手に配られたりしたら、みなさんはどう思いますか。特に作品を作ることによって収入を得て生活をしている人、例えばマンガ家や作曲家、小説家のような人は、著作物が勝手に使われてしまうと収入を得ることができず生活ができなくなってしまい、その結果として新しい作品を作ることも難しくなってしまいます。
 また、自分の思いがこもった作品について、勝手に内容を変更されたり、名前を書き変えられたり、まだ公開してない作品を勝手に発表されたらどう思うでしょうか。大切な作品がそのような扱いを受けるくらいなら、作品を公開しなくなってしまうかもしれません。
 著作権を守るということは、著作者の創作活動を支えていくということだけではありません。ルールを守って著作物を利用することで様々な作品が生み出され、皆さんの生活が豊かになることを願って法律で定められたのが「著作権」なのです。
3.こんなことも著作権侵害?
①【音楽ダウンロード】
・違法なサービスからのダウンロードに注意
 著作権者の許可を得ないまま音楽や映像をインターネット上にアップロードすること(データを投稿する行為)は著作権侵害となり違法な行為です。自分や家族などの限られた範囲の人が利用するために著作物を複製する行為(コピーする行為)は、許可なく行うことが基本的には許されていますが、2010年1月からは、違法にアップロードされたものであることを知りながら音楽や映像をダウンロードする行為(データを自分のスマートフォン(以下「スマホ」)やケータイ、PCなどにコピーする行為)も著作権侵害となりました。
 特に、2012年10月からは、違法にアップロードされた有料で販売・配信されている音楽や映像をダウンロードすると罰則が科されることになりました。無料でダウンロードができるからといって、違法にアップロードされた音楽をダウンロードすれば、あなたも違法行為を行ったことになり、場合によっては刑罰を科せられることもあるので、利用しているサービスが著作権者から許可を得ているかどうかを確かめてから利用するようにしましょう。
 また、違法なサービスの多くは、広告の掲載によって収入を得ていますが、もともと違法な行為をしているものなので、そこで得たお金が犯罪や不正な事業に使われている可能性もあります。このような違法なサービスが増えると、許諾をとった上で正当に運営しているサービスの運営ができなくなりますので、私たちがいつでも安心して、さまざまな著作物を利用できるように、違法なサービスの不正行為に加担しないようにしましょう。

・適法なサービスの見分け方
 JASRAC(日本音楽著作権協会)の管理作品を利用する際に、JASRACから許可を得ているサービスは、TOP画面にJASRACが発行している許可番号と許可マークが掲載されています。その他の管理事業者の場合も、同様の表示を義務付けています。
 レコード会社・映像製作会社との契約によって、レコード(CD)音源や映像などが適法に配信されているサイトには、「 エルマーク」がTOP画面などに表示されています。
 著作物を利用する際には、このような許可番号やマークが表示されていることを確認しましょう。

②【動画投稿(共有)】
 一般のユーザーがアップロードした映像・動画の視聴や、ダウンロードが可能なサービスを、動画投稿(共有)サービスといいます。テレビ番組やビデオクリップなどは、テレビ会社やレコード会社などが権利を持っていますので、これを勝手に複製し、それを動画投稿サービスにアップロードすることは権利侵害になります。もちろん、他のユーザーのリクエストに応じてアップロードしてもいけません。ユーザーは、他者が作成した映像コンテンツ(放送番組、プロモーション・ビデオ、映画など)を著作権者の許諾を得ずに投稿したり、市販もしくはレンタルされているCDの音源を無断で投稿したりすることはできません。ユーザーが自由に投稿できるのは、原則として、自作のものを自演した音楽や映像コンテンツのみとなります。

・まずサービスの注意事項の確認が必要
 動画投稿(共有)サービス上で「音楽」を利用する場合、運営事業者がJASRACなどの音楽の著作権を管理している事業者に許可を得ていれば、その許可条件の範囲内で、その事業者の管理する作品を自ら演奏して映像コンテンツに録音・録画し、投稿することができます。映像コンテンツを投稿する前に、どのような作品であれば自ら演奏して投稿することができるのか、まず、各サービスに掲示された注意事項を確認することが重要です。

③【SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)】
・アップロードしてもらうこと、されることにも注意
 SNS上で、友だちに知らせたい、聴かせたいという気持ちから、好きなアーティストの歌詞や音楽ファイルを自分でアップロードしたり、関心のあるユーザーを喜ばせたい気持ちから、アップロードのリクエストを募ったりするケースがありますが、いずれの場合も著作権者らの許可を得ないまま行うことは禁じられています。 違法なアップロードをしないだけでなく、アップロードのリクエストを受けつけることのないよう気をつけましょう。

・イラストなどの掲載にも注意が必要
 大好きなキャラクターのイラストを使いたい、Webサイト上にあった作品を友だちにも見せたいと思うことがあると思います。しかし、他人が描いたキャラクターは自分の著作物ではありませんので、原則的に著作権者からの許可がなければ使うことができません。利用条件などが定められている場合は、その利用条件に沿った使い方をしなければいけません。
 大好きなキャラクターを使いたいという気持ちは分かりますが、自分の著作物以外の作品を利用したい場合には、それがどんなものであっても、気軽にSNSなどに投稿をするのではなく、自分の意図した使い方が著作者に許可されているかどうかを確認するようにしましょう。

④【インターネットオークション】
・「海賊版」を出品・販売する行為は著作権侵害
 著作者の許可を得ないでコピーされたCD、DVDなどの録音・録画物、また同様にコピーされたビジネスソフトやゲームなどは、一般に「海賊版」と呼ばれています。勝手にコピーを作成し、インターネットオークションなどに出品・販売する行為は著作権侵害になります。録画したテレビ番組を、販売目的でDVDなどに複製する場合も同様です。また、自分でコピーしたものでなくても、海賊版と知りながら出品、販売する行為も著作権侵害となりますので、海賊版と分かっているものは決して出品、販売しないようにしましょう。

・「海賊版」の購入は危険
 海賊版であることを知りながら購入した場合、例えトラブルがあったとしても返金や返品などの交渉については当事者間で行うしかありません。海賊版の売上は犯罪組織の資金源になっていたり、購入者の個人情報が悪用されたりするなどのトラブルが起こることもあります。また、違法にコピーされたプログラムであることを知りながら取得し、業務などで利用する行為も著作権侵害にあたり、刑事罰や損害賠償責任が生じる場合もありますので十分注意しましょう。

⑤【ファイル共有ソフト(P2Pソフト)】
・P2Pソフトの悪用がもたらす深刻な問題
 スマホやケータイだけでなく、パソコンでも著作権に関する注意が必要です。「ファイル共有ソフト(P2Pソフト)」を利用していると、ウィルス感染や不注意により、パソコンに保存したCD、DVDなどの録音・録画物、またビジネスソフトやゲームなどのファイルがインターネット上に流出する場合があります。
 ファイル共有ソフトとは、ユーザー同士が直接アクセスし合って情報などを共有するもので、代表的なものでは、「WinMX」や「Winny」、「Share」、またGnutella系と呼ばれる「Cabos」、「Lime Wire」など多数のものがあります。これらのソフトでは、利用者間で瞬時に大量なファイルが容易に共有できるため、安易に著作権が侵害されるだけでなく、個人情報や機密情報の漏洩など、深刻な問題を引き起こします。
 P2Pソフトを利用して、著作者に無断で著作物のファイルを共有する行為も著作権侵害にあたり、映画・音楽などのファイルをダウンロードする行為も、違法サイトからのダウンロードと同様に違法行為となりますので、P2Pソフトの安易な利用は絶対に避けましょう。
4.作品の創作者・情報発信者として(盗用と引用)
 個人で楽しむだけでなく、インターネット上でSNSなどに書き込みをして多くの人が作品を閲覧できるようにする場合には、著作権を侵害しないように注意が必要です。他人の作品における表現を、勝手に自分の作品や投稿における表現として使ってしまうと「盗用」、すなわち権利を侵害したことになります。どうしても他人の作品の表現や記載などを使いたい場合には、「引用」として一定のルールを守る必要があります。引用する場合には、自分がオリジナルに創作した部分に比べ引用対象の作品の分量が少ないものであること、「」などをつけてその部分が引用であることを明確にすること、また、引用部分の出典元を明記するなどの配慮をしなければいけません。引用は一歩間違えれば著作権を侵害することになってしまうので十分に注意しましょう。
5.著作権を侵害するとどうなるの?
 著作権を侵害した場合は、損害賠償などの民事上の責任とともに、刑事上の罰則を受けることがあります。著作権法に違反すると逮捕され、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方と大変に重い罰則となります。また罰則だけでなく、捜査の過程で、家宅捜査、証拠品の押収などが行われ、自分だけではなく、家族や学校、友人にまで迷惑をかけることになります。インターネットは匿名での投稿が多く、誰が行なったのか分からないと思われていますが、捜査上の適切な手続きを取れば利用者を特定することも可能です。著作権の侵害は、非常に重い犯罪行為とされていますので、安易に「これくらいはたいしたことない」「自分だけは大丈夫」などと思わず、侵害行為を行わないように、十分注意してインターネットを利用するようにしましょう。
6.最後に(権利を守って豊かな社会に)
・著作権を守ることで社会が豊かに
 音楽や絵画、小説など、私たちの生活を豊かにしてくれるものはたくさんあります。しかし、こうした作品は創作する人たちがいなければ生まれてきません。また、創作物を皆さんが手に取れるようにするためには、様々な人たちの活動がなければ成り立ちません。著作権やそれに関連する権利を侵害する行為は、これらの人たちの生活を脅かすことになります。著作物を扱う時には、「自分一人くらいは大丈夫」などと安易に考えず、社会全体のことを考え、ルールをきちんと守って楽しむことが大切です。
 みなさん一人一人が注意しながら楽しむことで、よりたくさんの作品が生まれ、またそれを楽しむことができるようになり、豊かで文化的な社会を守っていくことができます。著作権などの権利の正しい理解を心掛け、権利侵害をしないように注意をして作品を楽しみましょう。
【補足資料】
 著作権やそれに関連した権利には、さまざまなものがあります。
・著作権のいろいろ
【複製権】
音楽を録音したり、小説などをコピーしたりすることに関する権利
【上演権・演奏権】
脚本にもとづいて劇を上演し、または音楽を演奏することに関する権利
【上映権】
映画やビデオなどを上映することに関する権利
【公衆送信権】
テレビやラジオで放送したり、インターネットで情報を発信したりすることに関する権利
【口述権】
多くの人の前で本などを読み上げることに関する権利
【展示権】
絵や彫刻などの美術作品やまだ発行されていない写真を展覧会などで展示することに関する権利
【頒布権】
映画の著作物を貸し、または他人に譲り渡すことに関する権利
【譲渡権】
映画の著作物以外の著作物を他人に譲り渡すことに関する権利
【貸与権】
音楽用CDやゲームソフト、書籍・雑誌などを多くの人に貸すことに関する権利
【翻訳権・翻案権】
小説などを翻訳し、または漫画のキャラクターを元に人形を作るなど、既にある著作物を元に、新たに創作性を加えて、別の作品を創作することに関する権利
・著作者人格権
【公表権】
著作物を公表するかしないか、公表するとすれば、どのように公表するかを決めることができる権利。
【氏名表示権】
著作物に氏名を表示するかしないか、表示するとすれば、どのように表示するのかを決めることができる権利。
【同一性保持権】
自分の著作物の内容を、勝手に変えられることのない権利。


 また、著作権は他人に譲ることができますが、人格的な利益を保護する著作者人格権を他人に譲ることはできません。常に創作した人が持っている権利であることを念頭においておきましょう。
・著作隣接権
 作品そのものをつくる著作者が「著作権」を持っているのに対し、その作品を世の中の多くの人に伝える歌手や俳優などは、著作権に隣り合わせの権利として「著作隣接権」という権利を持っています。具体的に著作隣接権者として保護されるのは、歌手や俳優などの「実演家」、CDなどをつくる「レコード製作者」、番組を放送する「放送事業者」、「有線放送事業者」の4者です。
 例えば、SNSなどで好きなアーティストのCDの音楽を流す場合には、著作者である作詞家、作曲家の許可と、歌を歌っている歌手や曲を演奏しているミュージシャンの許可、さらにCDを製作したレコード製作者の許可が必要になります。
【著作物を自由に利用できることがある】
●著作物を自由に使えるケース
 保護期間の経過により著作権が消滅した著作物(日本の場合は、原則として著作者の死後50年まで。映画の著作物の場合は、公表後70年。)については、自由に利用できます。ただし、著作権の保護期間と著作隣接権の保護期間(公表後50年まで)は連動していないため、著作権が消滅している作品の市販CDでも、演奏している実演家や製作したレコード会社が著作隣接権を持っている場合がありますので注意が必要です。また著作権が消滅している場合でも、その著作者が生きていると仮定した場合に著作者人格権を損なうような態様での利用は禁じられています。
 自分や家族など限られた範囲の人が聴くために、市販のCDの音楽をコピーする場合には、著作権に関する許可を取る手続きは必要ありません。ただし、たとえ自分が聴くためであっても、違法サイトと知りながら、そのサイトから音楽・映像などをダウンロードする行為は、2010年1月以降、著作権侵害とされ禁じられています。
 また、図書館や学校の授業での複製、営利を目的としない演奏などは、著作権者の許可を得ないで、自由に利用できる場合があります。

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