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ON AIR BLOG / 2017.06.21 update

今日のトピックスは「「韓国が脱原発宣言をしたというニュース」」 毎日新聞外信部デスク堀山明子さんに解説していただきました。

Q:韓国が脱原発宣言をしたというニュースです。どんな内容なのですか?
A:先月に発足した文在寅・新政権が今週初めの19日、 「新規の原発計画は全面的に白紙にする。既存の原発は寿命の40年以上は延長しない」
と演説しました。ちょうど一番古い原発が廃炉になる儀式での発言です。 韓国は現在、廃炉になる古里1号機も含め原発が25基あり、 総発電量の3割を原発が担っています。フランス、日本に続く、 世界第6位の原発大国です。文在寅大統領は選挙中から2030年までに 総発電量のおける原発依存率を18%まで下げると公約したいたので、 それを実行する決意を示したと言えます。

Q:新政権になったから突然、政策転換したというわけですか?
A:ビジネスマン出身の李明博政権は原発依存を高める政策でしたし、 朴槿恵前政権は2029年までに原発を36基に増やす計画を建てていたので、 保守政権から革新政権に9年ぶりに政権交代したからこそ起きた政策転換です。 韓国では日本ほど地震が発生していないので原発の建設基準が緩いのですが、 昨年9月に韓国南東部・慶州でマグニチュード5・8の地震が起きたので、 文大統領は「韓国はもはや地震安全地帯ではない。地震による原発事故は致命的だ」と 力説しました。理由を説明する際には、福島原発事故の教訓を強調しています。

Q:脱原発宣言に対する国民の反応はどうですか。
A:賛否は分かれています。オバマ政権が脱原発宣言をした時、 原発に変わる新エネルギーへの投資が新しい産業を起こすと強調したように、 脱原発したらしたで、新エネルギーや廃炉技術の海外輸出という新たな市場も 生まれるので、経済界に期待感はあります。でも、つい最近まで中東のUAEに 原発輸出をしようとしていたので、ここで脱原発をしたら、 原発市場でライバルの日本が喜ぶだけだといった論調も出ています。財閥サムスン系の中央日報は「原発に代わる電力需給対策の青写真がない」と 批判していますし、最大シェアの新聞である朝鮮日報も 「任期5年の大統領が勝手に決められる問題ではない」と反対の論陣を張っています。

Q:それにしても、福島事故の影響は大きかったのですね。 日本では震災の時に民主党政権で「30年代の原発ゼロ」宣言をしていた記憶が ありますが、安倍政権になって、だんだんウヤムヤになっていますよね。
A:日本では確かに、あれだけの脱原発を訴える市民運動がありながらも再稼働したので、 もう脱原発は無理なのかというムードがあるかもしれません。 でも世界的に見れば、福島事故はジワリジワリと世界の原発政策に影響を与えています。 米国はオバマ政権がすぐに脱原発宣言をしましたが、ドイツは22年までに 全17基の稼働停止を決めていますし、スイスは25年までに全7基を運転停止する 法律をつくりました。アジアでは台湾も25年までに全7基を運転停止する計画です。

Q:世界的には脱原発が現実的な選択肢として真剣に議論されているのですね?
A:そうですね。原発事故が発生した際の放射線拡散は国境を越えた問題になります。 中東やインド、ベトナムなど原発輸出ができる市場は相変わらずある一方で、 脱原発を目指す国や地域も増えています。 日本は、経済面重視で海外の原発市場に挑戦し続けるのか、 国際社会の新潮流に乗って脱原発を推進するのか、今後もっと議論するべきですね。

*福島は廃炉まで 30 年以上かかることを考えると、 日本が今日脱原発したとしても韓国とは状況が違う。*お隣韓国の決断をきっかけに原発のことを もう一度国民の私たちも考えてみんなで議論するべきなのでは?

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