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ON AIR BLOG / 2018.01.17 update

今日のトピックスは「来月開幕する 平昌オリンピックに関してのニュース」です。毎日新聞外信部、堀山明子さんに解説していただきました。

Q:今日のトピックは2月9日開幕の平昌(ピョンチャン)五輪に北朝鮮も参加し、開幕式での共同行進や一部の競技で合同チームが結成されるかもしれないというニュースです。ずいぶん急展開ですね。
A:はい、今月9日に南北閣僚級会談で平昌五輪の成功に向けて北朝鮮が協力するという合意がなされ、今日で2回目の実務協議が開かれています。五輪に合わせて140人規模の芸術団も派遣される方向ですので、2月は民族融和ムードが高まりそうです。

Q:つい昨年末まで国連で制裁決議をしたり、トランプ大統領が「最大限の圧力」を呼びかけたりしていましたよね。なぜ急に年明けに融和ムードに変わったのですか。
A:金正恩朝鮮労働党委員長が元旦の新年の辞で、南北対話を呼びかけたためです。もともと韓国の文在寅政権は核放棄を促すきっかけづくりとして南北対話を模索し、昨年に何度も北朝鮮に呼びかけていたのですが、北朝鮮側が無視してきました。新年になって北朝鮮が南北対話を言い出したのは、11月末に新型ICBM「火星15」を成功させて、米本土を攻撃できる「核武力が完成」したからだと分析されています。

Q:そうすると、南北対話が実現しても、北朝鮮は挑発をやめないということですか。だったら意味ないですよね。
A:アメリカと韓国は五輪とパラリンピック開催中は北朝鮮がいやがっている米韓軍事演習を行わないと言っていて、北朝鮮も対話中は挑発をしないとみられます。五輪期間限定の挑発停止というところでしょうか。南北閣僚級会談では、韓国が非核協議を提案したら強い不満を示したというので、核保有国としての法的地位を米国に認めさせようという北朝鮮の立場は基本的に変わっていないとみるべきです。ただ、北朝鮮と対立したままで五輪期間に突入するのは韓国にとってはとてもリスキーなことでした。南北が緊張関係にあった1988年のソウル五輪開催の際には、その前年に大韓航空機が北朝鮮工作員に爆破されるというテロ事件がありました。すでにミサイルが繰り返し発射されている昨年秋ぐらいから、欧州の一部の国で治安が不安定だからと参加見合わせを検討する国も出ていたので、韓国としてはなんとしても北朝鮮の五輪参加を通じて一時的な緊張緩和をつくる必要があったと言えます。

Q:確かに、ミサイルが飛ぶ中で、五輪は平和の祭典だとか言っていられないですからね。韓国国民の受け止めはどうですか。
A:北朝鮮五輪参加について直接尋ねた世論調査はないのですが、南北閣僚会談直後の世論調査では文大統領の支持率が少し上がって73%だったので、おおむね評価されていると思います。韓国は日本と同じく米国の同盟国ではありますが、同時に1000万人とも言われる南北離散家族を抱える分断国家です。1950年代の朝鮮戦争はまだ休戦協定であって停戦にはなっていないので、韓国国民にとって北朝鮮は日本が考える以上に直接的な脅威であると同時に、いつか統一するかもしれないという、同胞意識が常にあります。五輪開催地の平昌がある江原道(カンウォンド)はもともと38度線で分断された自治体で、地元住民は誘致の時に南北共催を提案したほどでした。北朝鮮の核ミサイル開発をどうとめるかという重い宿題は残されたままですが、この五輪を機に、朝鮮戦争を終わらせて本当の平和に導くにはどうしたらいいかということも、合わせて考えられればと思います。

オリンピックの精神に乗っ取って平和な方向に舵が取れればいいですよね。 ただ大会が外交の手段になってしまっていて、肝心の選手たちがフォーカスされていないのもなんだかなぁという気も。

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