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ON AIR BLOG / 2018.06.13 update

今回のテーマは「米朝首脳会談と日本」。毎日新聞 論説委員 平田崇浩さんに解説していただきました。

Q:きのう、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、 シンガポールで会談しましたね。
A:朝鮮戦争(1950~53 年)で戦ったアメリカと北朝鮮の首脳が初めて行った、 歴史的な会談。北朝鮮が「朝鮮半島の非核化」に同意した。 昨年は北朝鮮が弾道ミサイルの発射や核実験で国際社会を挑発し、 怒ったトランプ大統領が金正恩委員長を「ロケットマン」と呼んで、 戦争になるのではないかと心配された。それを考えると、画期的な合意だ。

Q:よかったと思いますが、単純に喜んでいいのでしょうか。
A:米朝首脳会談の共同声明は非核化の方向性を示したに過ぎず、 具体的な道筋は見えていない。日本の外交にとってはここから試練が始まる。

Q:なぜ日本の試練になるのでしょうか。
A:北朝鮮は核兵器と弾道ミサイルの開発を本当にやめるのか。 具体的に放棄するプロセスに入ることができたとしても、その実現には時間と労力を 要するのだろう。長距離ミサイルだけでなく、日本を射程に収める中距離ミサイル、 そして核・生物・化学兵器といった大量破壊兵器全般を放棄させなければ、 日本に対する脅威は残る。

Q:「日本は取り残された」という人もいますね。
A:ここで慌てて圧力を緩め、中途半端な非核化合意に終わって 核・ミサイルの脅威が残る方が怖い。もし仮に、本当に核兵器を使いかねない 「ならず者国家」がすぐ隣に存在することになったとき、日本はその恐怖に 耐え続けることができるのだろうか。米国の核の傘に疑問符がつくような事態になれば、 自前の核保有論も出てくるかもしれない。

Q:ここからの交渉が大事なのですね。
A:日本も積極的に交渉にかかわって、北朝鮮に完全な非核化を求めていかなければならない。 非核化が実現するまでしばらくの間は北朝鮮の核・ミサイルと向き合っていかなければ ならない。北朝鮮が再び合意を破るようなことがあれば、戦争の危機に逆戻りしてしまう。

Q:日本にとっては拉致問題も大事ですよね。
A:トランプ大統領は記者会見で「拉致問題も金委員長に提起した」と言った。 安倍首相が拉致問題の解決に強くこだわることにも「核・ミサイルより大事なのか」との 批判がある。だが、日本人拉致に象徴されるのは、北朝鮮の非人道的な抑圧体制だ。 アメリカが朝鮮半島の非核化合意と引き替えに金王朝の独裁体制を現状のまま 保証したら、抑圧国家が存続することになる。

Q:拉致は人権問題ということですね。
A:とはいえ、自国の利益のためだけに拉致問題の解決を訴えているかのごとく みられるのは得策ではない。北朝鮮の政治と経済を改革・開放へ向かわせなければ、 東アジアに真の平和は訪れない。そのことを国際社会に訴え続ける役割が日本には あるのだろう。

Q:まずは北朝鮮がアメリカとの合意を守るかどうかですね。
A:核・ミサイル・拉致のいずれも解決の道のりはこれからだ。 もちろん、米朝対話の進展は歓迎すべきことなのだが、 日本の憂鬱は梅雨空のように晴れない。
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