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毎日新聞 PRESENTS NEWS CONNECTION。

ON AIR BLOG / 2019.05.15 update

今日は「幼稚園や保育園の利用料が無料になるというお話」 毎日新聞 論説副委員長 前田浩智さんに解説していただきました。

Q:幼稚園や保育園の利用料が無料になるんですね?
A:小学校に入学する前に子どもたちが通う施設は大きく 3 つあります。 ひとつは幼稚園、専業主婦世帯のお子さんの割合が高くなっています。 もう一つは、保育士の配置とか国の基準を満たした認可保育所です。 さらに、認可外の保育所というのもあって、 保育所は共働きなどの世帯の子どもが多くなっています。

これら 3 つの施設に、3 歳以上の子どものざっと 300 万人の子どもたちが通っています。 この子どもたちの利用料をすべて無料にする法律が先週、成立しました。 たとえば、幼稚園の利用料は、基本的に 5 段階に分かれていて、高い方で月額 2 万 5700 円なのですが、全員、今年 10 月から無料になります。 認可保育所も月 10 万円余まで段階的に分かれていますが、 これも全員無料になります。だいたい、世帯平均で年間 21 万円ぐらい、負担が減ると言われています。

Q:所得制限とかはないんですね。
A:0 歳から 2 歳の子どもは住民税が非課税の世帯に限定されますが、3 歳以上の場合は所得制限はありません。 子育てや教育にかかわる家庭の負担を広く軽くして、 少子化を少しでも改善しようというのが国の狙いですので、制限はしないそうです。 ただ、所得が高くない世帯にはこれまでも負担軽減が行われてきましたから、 全世帯を対象とする今回の無償化によって、 富裕層の方がむしろ恩恵を受けるという問題が生じることになります。

Q:保育の「質の問題」というのも聞きます。
A:これは 2 つの側面があります。1 つは、認可外の保育所はもともと設置基準が緩いので、 国の基準を満たしていないところが 4 割以上もあるのですが、5 年間の経過措置が設けられていて、無償化の対象になります。 認可外が全部問題というわけではないのですが、 認可保育所に比べて死亡やけがの事故は多く、死亡事故の 7 割近くが認可外で起きているという調査結果もあります。 質を問わずに無償化の対象にしてしまうことで、結果として保育のレベルが 低いところを容認してしまうのではないかと懸念されています。

Q:もう一つ、あるのですね。
A:利用料が無料になれば、子どもを保育所に預けようとする人が当然増えます。 でも、保育士の確保や保育所の拡充というのはすぐには進みませんから、 待機児童はさらに増加して、 結果として保育サービスの低下になるのではないかというわけです。

Q:それにしても、無償化のお金が国によくありますね。
A:財源は消費税です。消費税は 10 月に 10%に上がりますが、国は 1000 兆円を超える借金の穴埋めに使うことになっていた中から、 保育園などの無償化にお金を回すことしています。 無償化によって借金返済が減った分は、 結果として今の子どもたちが将来背負うことになります。 子どもたちのためと言いながら、負担は子どもたちに回しているわけで、 どうにもしっくりきません。


――子どもたちのためにお金を使っていこうというのはいいと思うのですが、 心配なこともまだまだ多いようです。そして、毎日新聞 前田さん。今日で一旦 NEWS CONNECTION のご担当を 離れるということで。さみしい。。。今までわかりやすい優しい解説を ありがとうございました!!

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