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ON AIR BLOG / 2020.02.19 update
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今日のテーマは「新型肺炎と政治」。毎日新聞 論説委員 平田崇浩さんの解説です。

Q:今日のテーマは「新型コロナウイルス肺炎と政治」。政府の対応が後手に回っているという批判がありますね。
A:報道各社の世論調査で5割くらいの人が政府の対応を「評価しない」と答えています。同時に内閣支持率も下がっています。「桜を見る会」の問題もあるでしょうが、やはり、新型肺炎の感染がどんどん拡大している、安倍政権の危機管理がうまくいっていないのではないかという不満が支持率低下につながっているように思えます。

Q:具体的にはどこが問題だったと思いますか。
A:政府だけが責められることではないと思いますが、初動が鈍かったのは確かだと思います。そもそもは中国政府の対応が遅れたことが最大の問題で、1月25日の春節(旧正月)休暇に故郷や外国への「民族大移動」が起きるのを防いでいたらと言いたくなります。結局、日本政府も中国からの春節旅行客を一時期まで止めなかったのは、危機感が足りなかったと言わなければなりません。

Q:今から思えば、あのころにたくさんウイルスが日本に入ってきていたのでしょうね。
A:そうだと思います。なのに、後になってクルーズ船の客を全員、船内から出られないようにするのはちぐはぐですよね。かえって船内感染を広げてしまったかもしれないし、不自由な生活を強いられた方々の人権問題にもなってしまいました。

Q:結果的にはそうですけど、最初はどれくらいの感染力なのか、よくわからなかったのだから、仕方ない部分もあるのではないでしょうか。
A:そうですね。ただ、最悪の事態を想定するのが危機管理だとすれば、政府の対応には疑問が残ります。春節の観光客の入国を制限したら日本経済にマイナスになるという判断があったのかもしれません。今年4月に中国の習近平国家主席の来日が予定されていることも微妙に影響したかもしれません。

Q:習近平さんの来日とどういう関係があるのですか。
A:1月の時点では、中国側が自国民の海外渡航を禁じていないのに、日本側から拒否するのはどうかという配慮も働いた可能性もあるのかな、と。安倍首相は「戦後日本外交の総決算」をやりたいと言っていて、中国との関係改善をとても重視しているからです。

Q:日本の国会は今、どんな議論をしているのでしょうか?私たちが心配していることと、かけ離れた議論ばかりしているようにも感じてしまうのですが。

A:新型肺炎で大変な時に野党は政権スキャンダルの追及ばかりやっていてけしからん、という批判をよく聞きますが、新型肺炎対策やほかの政策の議論もしているので、誤解があると思います。「桜を見る会」についてはきょうは詳しく話しませんが、安倍首相がちゃんと説明しないから不毛な議論が延々と繰り返されるわけで、首相の責任は重いと思います。その結果として、国会審議なんて意味がないのではないか、政治なんて信用できないのではないかという政治不信がますます強まってしまう。それが日本の民主主義にとって最大の不幸だと思います。

Q:いずれにしても新型肺炎への対策で大事なのはこれからです。3月の東京マラソンは市民ランナーの参加なしで開催することになったそうですね。今後はスポーツ観戦やミュージシャンのライブとかも難しくなるのでしょうか。

A:もう日本中どこで感染してもおかしくない段階に入っています。一方で致死率はそれほど高くない。過剰に怖がらず、感染の拡大をどうやって最小限に抑えるのか。私たち国民の不安に具体的に応える情報の発信を政府には期待したいと思います。

——通勤・通学で満員電車に乗らないわけにはいきません。職場や学校にも大勢の人が集まります。私たち一人一人がパニックにならず、冷静に日常生活を送ることが大切なんだと思います。自分の体調などで不安に感じることがあったら、政府や自治体が電話で問い合わせに応じています。

厚生労働省のホームページも随時情報が更新されているのでチェックしてみて下さい。


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