みらい図鑑

VOL.342「やちむん」

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吉田美穂が6年7ヶ月に渡ってお送りしてきた「みらい図鑑」は、今回で最終回。

身の回りのモノやコト。
背景に“物語があるもの”を探して、その豊かさをこれまで数多くご紹介してきました。

3年前に東京から沖縄へ移住した吉田美穂、
そこで出会ったもののひとつが、「やちむん」です。

「やちむん」とは、沖縄の方言で「焼き物」のこと。

おおらかで、南国の空気を感じさせる味わい深い器は、“物語”そのものです。

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沖縄県立芸術大学の教授で、
陶芸家の山田サトシさんに伺いました。

「わたしが考える“やちむん”の魅力は、
アジアの国々に囲まれた沖縄の地理的な環境が大きいんですね。

アジアの各地の焼き物が、チャンプルー、混ざり合って、
さらに、沖縄のマインドが作った結果が反映されていると思うんです。

沖縄戦を経験したことで、
たくましく生き抜いた先人たちが作り続けてきたものが、“やちむん”です。」

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沖縄の土は、
焼き物を作ると、分厚くなったり、ひずんだりした器が釜からたくさん出てくるため、
じつは不向きだといいます。

ですが、それは、1300度の火を耐え抜いた証。

それを皆さんに届けている山田さん。

そして、山田さんだけでなく、
若い作り手が沖縄の土にこだわり、新たなやちむん製作に挑戦し続けています。

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山田さんは、やちむんづくりにかける想いをこんな風に語ります。

「どういう料理が作った器に乗るのかなと、
いつもイメージしながら作っているんですよね。
沖縄の風とか海とかを、そういう器から感じ取ってもらえたら嬉しいです。

好き嫌いはあるかもしれないし、使い勝手が悪いなと思うかもしれないんですが、
手にした人たちにとっては、
とっておきのひとつになって欲しいな、と思っています。」

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わたしにとっての「やちむん」は、
沖縄の風や海に加えて、いつでも、ぬくもりを感じられる焼き物です。

100年後の未来に語り継いでいきたいモノやコトには、
きっと、作り手の想いが乗っています。

その想いに触れる機会が多ければ多いほど、
日々の暮らしにも、彩りが生まれていくのはないかと感じています。

「みらい図鑑」 吉田美穂 

VOL.341「山梨生まれのオリーブオイル」

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国産オリーブオイル発祥の地といえば、香川県・小豆島ですが、
現在では産地も増え、生産農家さんも多くみられるようになりました。

今回、注目するのはそのうちのひとつ、
山梨県笛吹市生まれのオリーブオイルです。

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2016年に初の搾油が実現した、「笛吹オリーブオイル前田屋」。

代表の前田啓介さんは、
2012年に活動休止したロックバンド、レミオロメンのベーシストです。

音楽活動が一区切り終えたとき、
自分でゼロから新しいことを始めたいと考えた前田さん。

地元の仲間たちとの会話の中で、オリーブ栽培に着目したといいます。

「山梨には、野菜にお肉にワイン。
美味しいものがたくさんあるので、そういうものをつなぐオリーブオイルが、
みんなのものになっていけばいいなと思ったんです。」

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バンド活動休止後、地元・笛吹市に戻った前田さんは、
地域の耕作放棄地を開拓し、ゼロからオリーブの木を植えて、
オイルづくりに挑んできました。

2018年には大型台風の影響で、
オリーブの木が倒壊する災害にも見舞われた農園でしたが、
その後もオリーブへの愛情が失われることなく、栽培と搾油に励み、
今年、オリーブオイルの国際コンクールで「金賞」を受賞。

笛吹市産オリーブオイルの発展に貢献しています。

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人が喜んでくれることが、一番嬉しくもあり、大切な事だと語る前田さん。

自分がそういうものを作ることで、
興味を持った若者と一緒に広げていきたいと考えています。

「たとえば、音楽であろうと、僕たちが作っているオリーブオイルであろうと、
もっとも重要な材料って全部一緒で、それは、ものづくりに対する情熱と愛情。

それが、最初で最後の材料だと思っているんです。
それをしっかり持ち続けている人たちと、僕は出会うんですね。」

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夏は40℃、冬は−10℃近くにもなるこの地で搾れた、
「笛吹オリーブオイル前田屋」のオリーブオイル、
今シーズンの新作は、12月中旬以降に販売予定。

山梨の風景が凝縮された味を今から想像しながら、
冬を待つのも楽しそうですね。
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