みらい図鑑

VOL.274「今日から始められるぬか床」

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長いおうち時間に始めた方も多い「ぬか漬け」。

季節の野菜をぬか床に漬けて、
自分だけの味に育てていく時間はなんとも贅沢ですが、
漬け方もかき混ぜ方も、よくわからないし、かき混ぜるのが面倒な時もある・・・。

始める前から断念してしまう人も少なくありません。

そんなぬか漬け初心者の声を受けて生まれた商品のひとつが、
岐阜県にある米麹メーカー、「コーセーフーズ」が開発した、
「冷蔵庫で育てる熟成ぬか床」。

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そもそも、ぬか床は、容器に入れた米ぬかを涼しい場所に保管して、
発酵を促すために1日数回かき混ぜないと、
おいしいものができません。

この手間を限りなく省いたのが、「冷蔵庫で育てる熟成ぬか床」です。

特別な乳酸菌を使って超熟成発酵。
冷蔵庫で保管して、3〜5日おきにかき混ぜればOK。

とにかく簡単にできることにこだわりました。

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簡単に使える商品ですが、ぬか床本来の良さについて、
同社・古山浩二(こやま・こうじ)さんはこんな風に語ります。

「ぬか床って、その人によって味が変わってくるんですよね。
100個商品があって、最初は同じものでも、
100人のぬか漬けは違う味になっていくはずなんです。
家庭の味に染まってくるんですね。
ですから、ぬか床を育てている家庭って、なんとなく温かさを感じると思うんです。」

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ひとつとして同じ味は存在しない、ぬか床。

「冷蔵庫で育てる熟成ぬか床」をきっかけに、
家庭のぬか漬けの味を楽しんでもらいたいという古山さん。

「ファーストフード全盛の時代に、家のなかで手作りしたものを食べると、
おいしいね、このきゅうり、と会話が弾むんです。
作った人だけでなく、それを食べた家族にまで笑顔が広がっていくこと。
それがぬか漬けであり、スローフードの醍醐味ではないかと私は考えているんです。」

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時代に合わせた方法で発酵食品の可能性を広げたい。

そんな古山さんたちの思いは、
日本の食文化を次の時代につなぐ橋渡しになっています。



VOL.273「金沢でいちばん古いあめ屋が作る「じろあめ」」

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豊かな和菓子文化を誇る石川県金沢市。
この町で、190年以上の間、
変わらない製法で飴をつくっているのが、「飴の俵屋」です。

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名物は、「じろあめ」。

加賀地方の古い方言で、「じろ」は、「やわらかい」という意味。
その名の通り、
水あめ状の「やわらかい飴」が壺に入って売られています。

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「飴の俵屋」、俵 冬樹(たわら・ふゆき)さんのお話です。

「創業した1830年には、天保の飢饉もあって、
栄養価のあるものが手に入らなかったと聞いています。
“じろあめ”は、赤ちゃんを抱えたお母さんのために、
なにかできないか、という想いから生まれた飴なんです。」

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砂糖がとても貴重で、入手が困難な時代に誕生した「じろあめ」。
原料は、米と大麦、そして、水だけです。

洗ったお米を一晩寝かせるところから始まり、
麦芽を合わせて糖化させ、釜で炊き上げ、水あめ状にして壺に入れて商品化。
店頭に並ぶまでに、約4日間という日数をかけて、じっくりと丁寧に仕上げられます。

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200年近くもの間、変わらぬ材料と製法でつくられる「じろあめ」。

金沢の歴史とともに生き続けてきた食文化を守りたい、
と俵さんは語ります。

「お米から甘味が生まれる、という先代の知恵がずっと受け継がれてきました。
効率を求めるのではなく、これまで作ってきたものを守るために、
この先の世代も作り続けていけるように、
私たちが頑張っていきたいと思っています。」

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熟練の職人さんが、穀物から優しくて自然な甘味を引き出す「じろあめ」。

そのまま食べてももちろんおいしいですが、
料理に使うと、より一層、コクと深みが生まれて、
艶も出るんだそうですよ。

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