みらい図鑑

VOL.250「男もち女もち」

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山形県村山市にあるゲストハウス、「こめやかた」。

明治30年創業の米農家が運営し、
チームを組んで、お米の生産から販売はもちろん、
民宿の経営、さらには食堂も開いています。

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そんな「こめやかた」が、種まきから丁寧に育てたもち米で作っているのは、
杵と臼を使って、200回、手でついた、杵つきの餅。

四角い餅を「男もち」、丸い餅を「女もち」という名前で販売を始めたところ、
全国から反響が寄せられています。

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「こめやかた」の女将、
坂井奈緒(さかい・なお)さんに伺いました。

「私たちは、農を通して、作る楽しみだったり、食べる楽しみ、生きる楽しみ、
そういうものを共有していきたいんですね。
それで、いろんなことをやらせていただいています。

いま、とても便利な世の中になってますが、
便利になった一方で、失われていくこともありますよね。
そのなかで、私たちにとって、
未来につなげていけることのひとつが、餅つきだったんです。」

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田園風景が残る山形県でさえも、手つきで餅をつくという風習は、
ほとんどなくなってきていると、坂井さんは言います。

「お餅って、作る過程ですごく面白いのは、
最初は、一粒一粒、バラバラの米粒なんですよ。

それがセイロで蒸されることによって、かたまりになり、
杵でつかれることによって、つやっとしたお餅になるんですよね。」

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“200回つけば、餅は変わる”というのが、「こめやかた」のポリシー。

目指すのは、ふわっとやさしい食感、
そして、食卓を明るくする餅です。

「バラバラだった米粒が、みんなの力でひとつになって、
“うわー、美味しいね!”って、
笑顔にさせるお餅になるっていうのは、すごく魅力的だと思います。」

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餅つきのある風景を残したいという米農家の思いと、
杵つきの餅を楽しみに待つ人々の笑顔。

作り手も食べる人も一緒になって楽しめる農業って素敵ですね。

VOL.249「いちょうの木のこどもまな板」

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古くから木工業が盛んな岐阜県。

ここに、子ども用のまな板を作っている会社があります。
くらしの様々な道具を木で作るブランド、「ウッドペッカー」。

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使っている素材は、イチョウの木。

やわらかい、というイチョウの木ならではの特性を最大限に活かした「こどもまな板」、
弾力があり、刃当たりがやさしいので、
子どもの手にかかる負担が少ないのが特徴です。

そして、まな板の表面には、可愛いイラストと目盛りがついていて、
利き手がどちらでも使える、ユニバーサルデザインになっています。

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「ウッドペッカー」の代表、福井賢治さんにお話を伺いました。

「昔から板前さんとか料理人は、包丁に対して、包丁が刃こぼれしないように、
また、刃あたりが良いように、硬い木よりやわらかい木を選んでいたので、
お母さんや板前さんと一緒ですよね。

やわらかい木で切った時の感触もいいし、
料理をするのって楽しいよね、っていう思いを持ってもらいたいなと。
あえて、子ども用という名前をつけて、目盛りもつけました。」

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まな板という道具になったとき、
切りやすいだけではなく、あたたかい手触りや、白く美しい木の肌、
すがすがしい香りが感じられるのも、イチョウの木の魅力です。

「木という存在って、ぬくもりとか、年輪とか、
一枚として同じ柄がない木目の面白さに惹かれる方もいるのかなと思います。

このまな板は、メンテナンスをすれば長く使えます。
包丁の切り跡などは、
表面をカンナで削ってメンテナンスすることができるんですね。」

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「継続して長く使えることを感じてもらうことと同時に、
木という存在自体、植え続けて、伐採して、乾燥させれば常に木材なので、
循環している素材なんです。」

日本は、森が豊かな国。
長く使える知恵をみんなで共有し、
温かい循環が生活の中に取り入れられていくと、
クラフト製品が木であることに意味が生まれる、と福井さんは語ります。

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素材からデザイン、使いやすさ、そして安全性にまでとことんこだわった、
「いちょうの木のこどもまな板」。

やわらかい木の板に包丁が当たる、トントントン、、という音こそが食育になり、
木についての理解を深める、“木育”にもなっているんですね。

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