みらい図鑑

VOL.224「こけし缶」

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缶詰の中に入った、こけし。
その名も、「こけし缶」という、東北のみやげものが話題を呼んでいます。

いわゆる「サバ缶」のような、一般的な形状の缶。
プルタブを開けると、直径5センチの小さな“伝統こけし”が、ぴょこんと顔を出します。

こけしを作る際に出る木くずが、緩衝材代わりに詰められていて、
開けた缶から木の香りがふわっと漂うのも「こけし缶」ならでは。

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※作並系 平賀輝幸工人

開発したのは、
宮城県仙台市で、さまざまな工芸品を制作・販売している老舗、「こけしのしまぬき」。

あるとき、食品で何か手掛けてみたいと、仙台駄菓子を缶に入れてみたことがきっかけで、
伝統こけしを缶に入れる、というアイデアが生まれたんだそうです、

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※鳴子系 大沼秀則工人 

「こけしのしまぬき」、代表の島貫昭彦(しまぬき・あきひこ)さんのお話です。

「わたしたちの“こけし缶”には、じつは、2種類あるんです。
普通の“こけし缶”と、“新工人応援缶”。

後継者問題は、どうしても、こけしの業界にもありますから、
作り手は、どんどん減っているわけですよね。
そんななか、わたしたちに何ができるだろうと考えて生まれたのが、“新工人応援缶”です。」

“工人”とは、ひとりで全工程をこなす職人のこと。

こけしづくりは、丸太を購入するところから、最後の工程まで全て一人で手掛けるため、
“こけし工人”と呼ばれます。


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※富塚由香こけし缶 弥治郎系新人応援缶

伝統的な作り方が、それぞれ決まっている伝統こけし。
それを作るには、師弟関係がある中で、師匠に認められることが必要です。

「こけしの職人になったばかりの人は、
ひとつのものをたくさん作る、という仕事が最近あまり無いんですね。

そういう仕事をお願いする中で、自分のスタイルができていったり、
自分の技量にプラスになるようなことにも貢献したい、という想いが生まれたんですね。

何十年か後には、良いこけしをたくさん作るような、
そういう“こけし工人”になってもらえたらいいな、という風に思っています。」

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※弥治郎系 鎌田孝志作 こけし缶 牡丹

伝統こけしを未来へとつなげる、「こけし缶」。
手しごとによる“優しさ”や“ぬくもり”も、一緒に詰められているギフトなんですね。

VOL.223「富山の薬売りの“紙風船”」

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江戸時代から今に続く、「富山の薬売り」。

薬を手に訪問したお宅で”おまけ”として、
薬の商品名や、製薬会社のロゴを入れて配っていたのが、コロンとした四角い「紙風船」。

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遊び道具が少なかった時代において、
たくさんの子どもたちを笑顔にしてきた富山の文化ですが、
売り物でもない紙風船を作る後継者は、めっきり減ってしまいました。

そんななか、この伝統を終わらせてはいけない、と、
富山県で約140年続く、医薬品パッケージをメインに手掛ける老舗印刷メーカー、
「富山スガキ」が立ち上げたのが、新たな紙製品ブランド、「cusuri」のkamifu-sen。

作っているのは、モダンで可愛いデザインの紙風船です。

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プロジェクトを担当するデザイナー、名越恵美(なごし・えみ)さんのお話です。

「もとからうちは、紙風船を作っていた会社なんですよ。
現在も作っている会社は、富山県内でも、ほぼ、うちだけという状況です。
なんとかしないと、伝統が終わってしまう、という危機感がありました。

今までは、タダでもらえるものだったものを、
新たに、時代に合うようにデザインして、
販売したらいいんじゃないか、という考えにたどり着きました。」

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模様を合わせて紙を折り、角がきれいになるように貼り合わせるのは、熟練の技。

手作業での作り方はそのままに、
相撲取りやダルマ、こいのぼりやフルーツなどをモチーフにした絵柄で、
インテリア雑貨としても喜ばれそうな「kamifu-sen」をつくり、その魅力を発信しています。

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「cusuri」のkamifu-senについて、
名越さんはこんな思いを抱いています。

「“富山の薬売りの四角い紙風船”、という長い歴史の中に、
新しいストーリーとして、
わたしたちのブランドが加わればいいなと思っています。」

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未来へ残すために、おまけではなく、販売できる商品を作ろう、
という想いから生まれた紙風船。

懐かしいのに、どこか新しい。
お部屋にひとつあれば、気持ちがホッと安らぎそうですね。
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