みらい図鑑

Vol.15 「染織物の傘」 山梨県

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江戸時代から、織物の産地として栄えた山梨県。
南都留郡、その隣の富士吉田市、都留市など一帯は郡内地域と呼ばれ、
富士山の豊かな湧き水を利用した「郡内織(ぐんないおり)」と呼ばれる絹の先染め織物が
盛んな場所です。

今回、注目するのは、郡内織物の老舗、創業150年の槇田商店。
先染めの傘生地で傘をつくっています。



華美な着物を禁じられていた江戸時代のこと。
表地は地味な色に抑え、裏地に凝るのが「粋」とされていた「裏勝り(うらまさり)」という
流行がありました。
当時の郡内地域は、その装飾性の高い裏地を織り、江戸や大阪に卸していたんだそうです。

槙田商店も昭和29年ごろまでは裏地の生産を主としていましたが、
そのあと洋傘地の製造へとシフト。
“織物屋がつくる傘”というのが一番の特長。6代目、槇田洋一さんはこう語ります。

「織物で作られているということで“大丈夫なの?”という話も聞かれるんですが、
プリントなどの生地に比べて、生地感としてはしっかりしますし、
柄の立体感、色の鮮やかさ、色の深さ、そういったものが全く違うと思います。」



現在、日本が海外から輸入している傘の数は、なんと1億3000万本!
そのなかでも、ぜひ、国産の傘を選んでほしいと槇田さんは話します。

「デザインだとか、持った時に気持ちをあげてもらう傘って言うのもあってもいいと
思うんですね。
織物で作っている生地なので表と裏でも柄が楽しめますし、
雨の日に、出かけてみたくなるような傘になってくれたらいいなと思っております。」

雨をしのぐだけではない、持って心が躍る美しい傘。
染物屋さんがつくる丁寧な仕事に、雨の日の足取りも軽やかになりそうですね。
100年後の雨の日にも、この傘が開いていますように。