みらい図鑑

Vol.44 「浜松凧」 静岡県

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日本の正月の風物詩のひとつ、凧揚げ。
凧づくりの産地、静岡県の浜松市からのタカラモノです。

子どもたちの健やかな成長を願って、地域みんなで祝う市民のお祭り、
「浜松まつり」で行われる風習が「大凧揚げ」。その歴史はおよそ470年にもなります。

174か町が参加。畳二畳から十畳、3メートル以上もある大凧に、
家紋や町印、子どもの名前を書いて空高く揚げる「凧揚げ合戦」は、
優雅さやデザインも競われ、凧による町内対抗戦や糸切り合戦も行われます。



江戸時代から続く、凧造りの老舗、『上西すみたや(かみにし・すみたや)』の10代目、
大隅文吾(おおすみ・ぶんご)さんのお話です。

「昔はですね、もう家の前にいっぱい田んぼや空き地がありましたので、
お正月なんかには、小さな凧を上げて、
将来、大きな凧を上げられるように技術を磨いていたんですが、
最近は田んぼがない、空き地が無い、
凧あげに触れるチャンスが子どもたちに無いのが残念です。」

空き地がない。
そして、多くの公園でも禁止されていることから、
凧揚げで遊ぶ子供たちはずいぶん減ってしまいました。
それでも大隅さんは、新しい年を迎えたら、ぜひ、凧を揚げてほしいと話します。



「団体行動よりも、ひとりひとり行動してしまうこの世の中にですね、
ひとつの目標に向かって、普段は顔も合わせないようなみんなと同じ方向をむいて、
一つのことをやり遂げるのは素晴らしいことだと思いますね。
普段は気が付かなかった空の青さとか、
違う世界があるんだということに気が付く、いいきっかけになるんじゃないかと思います。」

風の強さに対しての糸目の角度や紐の調整など、
凧を上手くあげるもあげないもバランスが大事。
色んな事を考えてバランスを取るのは人生と同じだと、大隅さんは語ります。

空を見上げると、新しい世界が開けてくる。
吹いてくる風が人生の追い風となることを願って、
新年、誰かを誘って凧揚げに出かけてみてはいかがでしょうか?