みらい図鑑

Vol.56 「桜のおわん」 神奈川県

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日本を代表する花と言えば、桜。その魅力は、“花”だけではありません。
今回は、桜の“木”にクローズアップ。

桜の木を使って、ひとつひとつ丁寧に「お椀」を作っている工房が、
神奈川県の小田原市にあります。



木工所をかまえ、原木の加工から塗装までの一貫生産で、
木工製品・漆器・小田原漆器の製造販売を行っている会社、
「薗部産業」、代表・薗部利弘(そのべ・としひろ)さんにお話をうかがいました。

「桜はですね、やさしい、柔らかい感じの材料です。
同じ素材でも重たい時もあるし、軽い時もあって、木目も個々にみんな違うんです。
それを景色として楽しんで頂いて、みなさんに使って頂ければありがたいなという想いで
作りました。」

使う木材は、木を切るのに適した時期があり、春に芽吹く前に伐採。
そして、製品になるまで、なんと6ヶ月もかかるというから驚きです。



材料の“板”からお椀を作るのは、実は難しい、と薗部さんは語ります。
お椀の形にくり抜き、乾燥から加工まで、職人の技が必要。
塗装の工夫も試行錯誤しながら、一つ一つ改善していったそうです。




桜のお椀を手に取った人からは、さまざまな声が届いているようです。

「“かわいい”とかそういう声が多いんですが、使っている方に聞くと、
手に取った感じがとてもいいとか、今まで味噌汁を飲まなかったお子さんが、
このお椀を買ったら、味噌汁を毎日飲むようになったとか、
嬉しい声をたくさんいただいています。」

桜のお椀は、平成10年から小田原の小学校でも使用。
お椀は使ってもらうのが一番!と、小学生が扱いやすいサイズに仕上がっています。

お椀のひとつひとつ異なる“木目”を景色として楽しみながら頂く食事。
きっとお箸も進みますよね。