みらい図鑑

Vol.67 「和傘」 大分県

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雨の日には欠かせない「傘」。
傘は傘でも、日本の伝統文化の一つである、「和傘」が今回の主役です。

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江戸時代に庶民の道具として普及し、全国各地で数多く生産されていた和傘。
しかし現在では、和傘を作る職人さんは一握りを残すのみとなっているようです。

大分県の中津で和傘を作り続けている、和傘工房「朱夏(しゅか)」。
お客さんの要望に沿って、1つ1つ手作業で丹精込めて作る「一点物」が中心です。
代表の今吉次郎(いまよし・じろう)さんに伺いました。

「和傘の魅力としてはね、雨の音を感じることなんですね。
雨が降り出したときに和傘をさして歩くと、やっぱり雨の音を感じるし楽しくなるんです。だいたい雨の日って嫌な気分になりますが、
和傘をさそうと思うと、雨も楽しいかなぁって思います。」

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今吉さんの工房がある大分県中津市における和傘の歴史は、1812年頃から。
傘の材料である、竹・和紙・油・柿渋等が地元で調達できる環境があったため、
地域の特産品として中津和傘の製造が始まりました。

最盛期であった昭和の初め、中津には70軒ほどの和傘屋がありましたが、
洋傘の普及とともに衰退。現在では、たった1軒のみになっています。

「生活の道具だった和傘が廃れてしまうのは、当然、時代の変化ですよね。
いまいちど、やっぱり“使いたい”と思えるものを作っていかなければいけないかなと。
地域に残すためには、後継者のためにも中津に和傘を残して、
発信していきたいなと思っていますね。」

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「傘に神様が宿る」ということから祭りなどの神事にも使われている和傘。
中津市では860年続いている伝統行事が毎年8月に行われ、
そのときに使う“祭り傘”の修理や補修なども「朱夏」が請け負っています。

さらに、全国で和傘屋さんが減っているので、いろんな所からも依頼が来るそうです。

歴史を守り続けながらも時代にマッチしたものを、と、洋服にも合う柄の和傘づくりにも
挑戦している今吉さん。

洋傘だけでなく和傘にも目を向けると、雨の日の過ごし方が変わってきそうですね。

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