Vol.74 「江戸風鈴」 東京都
夏の風物詩のひとつ、風鈴。
地域によって形も素材も違う風鈴ですが、今日の話題は、ガラスで作る”江戸風鈴”です。
東京・江戸川区にある、創業100年を越える江戸風鈴の老舗、「篠原風鈴本舗」。
「江戸風鈴」という名前は、ここから誕生しました。
もともとは「ガラス風鈴」、「ビードロ風鈴」などと呼ばれていましたが、
昔の東京すなわち「江戸」で、江戸時代から作られていたことから、
昭和40年頃に「江戸風鈴」と命名。
いわば「篠原風鈴本舗」発祥のブランド名なのです。
「篠原風鈴本舗」で作られる江戸風鈴の技法は、
型を使わず空中で吹き上げる“宙吹き”という方法。
1320度の炉の中に溶けているガラスを竿に巻き取ってふくらまし、
吹き上げたガラスの一部を手作業で切り離して、鳴り口を作ります。
「篠原風鈴本舗」の職人・篠原恵美(しのはら・えみ)さんのお話です。
「やはり一個ずつ全部手作りですので、
大きさとか形とか厚みとかが全部変わってくるんですね。
音色が柔らかいんですね。
夏の暑い時期、このチリンチリンという音は癒される音色ではないかと思うんです。」
一つ一つ手作りで、同じ音色は二つもないという江戸風鈴。
ガラスに吹き込まれるのは、職人さんの命です。
「父はですね、いま、92歳。
ほんとうにもう70年ぐらい風鈴を続けてきましたけれども、
そのなかで、“本当にこれはいい風鈴だなと思ったのは一個もない”と言っているぐらい、
本当に難しい作業ですし、やっぱり、一生が修行の仕事だと思っています。」
職人さんの“想い”の分だけ優しい音色を奏でてくれる風鈴。
手作りならではの“涼”を皆さんも楽しんでみませんか?