みらい図鑑

Vol.108 「大館曲げわっぱ」 秋田県

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今日の話題は、「曲げわっぱ」です。
木材を使った伝統工芸品で、今も愛され続けている弁当箱です。
日本全国で作られていますが、代表的な産地の一つが、秋田杉を誇る秋田県の大館市。
国の伝統的工芸品に指定されています。



曲げわっぱ自体が、秋田で作られるようになったのは、なんと約1300年も前だといいます。

そして、“産業”としての曲げわっぱの始まりは江戸時代。
当時の佐竹藩の大館城主が、秋田に豊富にあった秋田杉を使って、
下級武士の副業として作らせたのが最初です。

伝統工芸士で、「柴田慶信商店」の二代目・柴田昌正(しばたよしまさ)さんに
お話を伺いました。

「大館曲げわっぱは、秋田杉で作るんですね。
秋田杉には、余分な水分を吸ってくれるという性質があるので
ご飯が冷めても美味しい、夏場も水分を調整してくれるのでご飯が痛みにくい。
それが曲げわっぱの一番の特徴なので、
その長所を伸ばしていく“ものづくり”をしたいと思っています。」



実際にどうやって、曲げわっぱが作られていくんでしょうか?

一番難しい工程は、木を曲げて端を合わせたとき全体が均一な厚さになるように、
切り出した曲げの部分の板の両端を薄く加工する「はぎ取り」という作業。

その後、はぎ取りした板を80度になるまで湯船で煮て、
取り出した板を丸太に沿って巻き、型に合わせて曲げ、木バサミで固定。
これが「曲げ加工」です。





曲げた部材は7日から10日ほど乾燥させ、接着材をつけて約1日置いた後、
仕上げの手入れが済んだら、最後に接着部分を桜の木の皮で綴じて完成。

1個の曲げわっぱができるまで、約3週間もかかるんだそうです!

しかし、本当の物語はそのあとだと、柴田さんは言います。

「曲げわっぱというのは、完成して、お客さんの手に渡ってから、
そこから物語が生まれて行くんですね。
お母さんが子供にお弁当を作って、子供が全部食べて帰ってきたときに、
お弁当を通してのお母さんと子供とのキャッチボールがそこに生まれるんですよね。
もしかしたら、曲げわっぱがツールとなって、平和にもつながるんじゃないかって、
大きいことを言いますけど、そんな風に思っています。」



素材の性質を最大限に生かす伝統的工芸品、曲げわっぱ。
みなさんも、世界にひとつだけの物語を、
曲げわっぱから作ってみては如何でしょうか?