2008年7月27日
重松清 『ビタミンF』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「ひとの心にビタミンのように働く小説があったっていい」。重松清さんがそんな想いで書かれた短編小説集「ビタミンF」(新潮社 / 新潮文庫)。2000年に刊行され、直木賞にも輝いた作品です。収められている7つの作品に登場するのは、30代後半から40代前半の父親たち。妻や子供との関係も微妙になり、人生の輝きも薄れ、過去に思いを馳せ、しかし「また頑張ってみよう」そんな想いにさせてくれるまさにビタミンのような小説集です。この中で小川さんが特に好きな作品は「はずれくじ」。妻が入院する中、息子との関係をあらためて感じる主人公。それは自分の父親に対する想いにもつながっていくという物語です。

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