2008年12月14日
江國香織『デューク』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「デュークが死んだ。わたしのデュークが死んでしまった。」という印象的な言葉ではじまる江國香織さんの短編小説「デューク」。このデュークとは、主人公が大切にしていた犬の名前。その「デューク」が死んだ悲しみで、涙がとまらない主人公はある不思議な体験をするのです。混み合う電車の中でひとりの少年と出会い、クリスマスが近づく町でひととき過ごします。喫茶店に入り、12月なのにプールで泳ぎ、アイスクリームを食べ、そして別れ際にキスをする少年。そのキスがあまりにもデュークに似ていたため、青信号で立ちつくす主人公。街にはクリスマスソングが流れ、夜がゆっくりとはじまっていきます。

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