心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
明治に生まれ、大正時代に活躍した作家・有島武郎。彼が40歳の時に発表した小説が「生れ出づる悩み」です。物語は文学者である‘私’の語りによって綴られていきます。その私が出会ったある青年。彼は北海道の岩内で漁夫をしながら画家になる夢も持ち続けていました。しかし芸術への信念が生活によって揺らいでいくことへの悩み。語り手である私は、そのことを綴っていくと同時に、その中に文学者としての自分自身の苦悩も重ねていきます。同じ作家として小川洋子さんも共感できる部分が多かった小説。最初の1ページを読んだだけで文豪である有島武郎もこれほど苦しんで書いていたのかと感じたそうです。
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