2009年09月20日
ジェームズ・ヒルトン
『チップス先生さようなら』 
(新潮文庫)

「チップス先生」のように英国の老紳士が主人公の小説というと、ちょうど2年前の同じ時期に取り上げたカズオ・イシグロの「日の名残り」を思い出します。あの小説は、長年、由緒ある家に仕えた初老の執事スティーブンソンの物語。どこか「チップス先生」と共通する部分があるように感じます。「日の名残りの執事スティーブンソンも、チップス先生も孤独な晩年を送っていますが、しかしその孤独がいかに人間を豊かにしてくれるかを教えてくれます。」と小川洋子さん。そしてどちらの小説にも、安定した静けさが広がっているのです。人生を豊かにしめくくるためには、どう生きたらよいのか。そんなことも教えてくれる2つの小説です。

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