2010年09月19日
黒井千次『高く手を振る日』  (新潮社)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今年の春に出版されて話題となっている1冊、黒井千次さんの小説「高く手を振る日」。70代の男女の恋心を描いた作品です。物語の主人公・浩平は、70歳を超えて人生の行き止まりを意識するようになっています。50代で妻にも先立たれ、現在はひとり暮らし。そんな中、友人の葬儀で懐かしい人と再会します。大学時代のゼミ仲間だった重子という女性。二人は学生時代、一度だけ淡い出来事がありました。再会をきっかけに浩平は、彼女に引き寄せられていきます。「老いるということをテーマにしながら、そこに希望を感じる小説。」と小川洋子さん。「高く手を振る日」というタイトルにもその希望が込められています。

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