2011年03月06日
菊池寛
『恩讐の彼方に』
 (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

大正から昭和にかけて活躍した作家・菊池寛。彼が大正8年に発表したのが短編小説「恩讐の彼方に」です。あるじ殺しや人切り強盗を繰り返していた物語の主人公「市九郎」は、自分の犯した罪をつぐなうために出家し、全国行脚の旅に出ます。そして行き着いたのが今の大分県である「豊前の国」。そこで「市九郎」は、自分の求めていたものに出会うのです。交通の難所とされた峰に「青の洞門」と呼ばれるトンネルを開通させた僧侶の史実をもとに作り上げられました。現在、歌舞伎の演目にもなっている名作。小川洋子さんも今回、読んで「短い小説の中に濃密なドラマが詰まっている。」と感じたそうです。

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