2011年09月11日
伊藤左千夫
『野菊の墓』
 (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

伊藤左千夫が明治39年に発表した短編小説「野菊の墓」。物語の主人公は、政夫という15歳の少年です。彼には、民子という2歳上のいとこがいて、二人で遊ぶのが何より楽しい時間でした。ところがある日、政夫の母親は二人にこう伝えます。「男も女も15,6になれば子供ではない・・・」このことをきっかけに、距離を置くようになる政夫と民子。それと同時にお互いを想う淡い気持ちがふくらんでいくのです。松田聖子さん主演の映画で有名になった「民さんは野菊のような人だ」というセリフをはじめ、初恋の心情が繊細に描かれている作品。さらに主人公である政夫の成長物語としても味わうことができる小説です。

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