2011年11月13日
アゴタ・クリストフ『悪童日記』
 (ハヤカワepi文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今年の7月に75歳で亡くなったハンガリー生まれの作家アゴタ・クリストフ。今週は、彼女の処女小説「悪童日記」を取り上げました。1986年に発表され、日本では91年に堀茂樹さんの翻訳により早川書房から出版され話題となった作品。物語は、大きな町に住む双子の少年が、激しくなった戦争を逃れて、おばあちゃんの暮らす町に疎開するところからはじまります。その後の過酷な日々を日記のような形で綴ったのが「悪童日記」。小川洋子さんもはじめてこの本に出会った時、「かつて読んだことのない小説」と感じたとか。余分なものを削ぎ落した文体で、誰が善人か悪人かわからない世界を描いています。

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