2014年05月25日

ゴールズワージー
『りんごの木』
 (岩波文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

5月を舞台にした物語「りんごの木」。イギリスの作家ゴールズワージーが1916年、49歳の時に書いた小説です。物語の主人公は48歳のフランク・アシャーストという男。彼は銀婚式を迎えた日、妻をともなって二人が出会ったゆかりの地、イングランド南部トーキーへと向かいます。ところがそこで目にしたものは、道端に置かれた墓。なんとそれは若き日、アシャーストが深く関わったメガンという少女のものでした。彼がまだ大学を卒業したばかりの時、友人と旅した5月にメガンと出会ったのです。お互い強くひかれあいながら、しかしメガンを裏切ってしまったアシャースト。美しい描写で描かれているため、その切なさはより強く迫ってきます。

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