2014年08月03日

村田喜代子
『鍋の中』
 (文春文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今週取り上げたのは村田喜代子さんの「鍋の中」。1987年に芥川賞を受賞した短編小説です。1991年には黒澤明監督がこの作品をもとに「八月の狂詩曲」という映画も製作。小説と映画の内容はまるで違うものですが、どちらもおばあさんと4人の孫が夏休みを過ごす物語になっています。小説「鍋の中」の語りは、孫のひとり「たみ」という17歳の少女。おばあさんが作る料理があまりに不味かったため食事係に任命されます。その他の登場人物は弟の信次郎、いとこのみな子と縦男。そして4人の孫の祖母「苗」80歳。孫たちはおばあさんと過ごすうちに、長く生きていくということが、どういうものなのかを感じていきます。

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