2015年01月11日
石川達三
『青春の蹉跌』
 (新潮文庫)

作家・石川達三さんは初の芥川賞作家。1935年に「蒼氓」という作品で第一回の芥川賞に輝いています。その時、石川達三さんは30歳。その後、数多くの作品を発表されて「青春の蹉跌」は63歳の時の小説です。さて「青春の蹉跌」を読み終えて心に残るのはどんな事でしょうか?やはり江藤賢一郎の存在感。人間に必要な何かが決定的に欠けている人物で、この小説を通して人間の愚かさが描かれています。47年前の小説ですが、今も読み継がれているのはこの物語の中に普遍的なものが描かれているからかもしれません。みんな自分のエゴと戦っていて、そのエゴをどうおさめていくかに苦しむもの。救いようのない文学の中にも何か人生のヒントがあるのではないでしょうか?

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