2015年01月25日
パトリック・モディアノ
『1941年。パリの尋ね人』
 (作品社)

「1941年。パリの尋ね人」はノンフィクションとは言いながら、事実だけを記録した作品ではありません。少女ドラの足跡を追い求めていく中で、わからない部分が沢山ありました。そのためモディアノは、想像力を働かせてわかった点と点を結びあわせ、ドラという少女の輪郭をはっきりさせていくのです。小川洋子さんがこの作品をはじめて読んだのは作家となって8年ほどたった頃だったそうです。「自分はなぜ書いているのか」という不安を持った時にこの本に巡りあい、ひと筋の希望を見出すことができたとか。もはや名前もわからなくなった人々を死者の世界に探しに行くこと。文学とはこれに尽きるのかもしれない、という小川洋子さんの言葉が印象的でした。

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