2015年03月22日

坂口安吾
『桜の森の満開の下』
 (岩波文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

この季節には桜にちなんだ作品を選んでいます。去年は梶井基次郎の「桜の樹の下には」。一般的に桜は美しい花、切なく感じる花ととらえられていますが、梶井基次郎の場合は怖ろしいものとして描かれていました。そして今年は坂口安吾の「桜の森の満開の下」。こちらもまずお花見の風景を全否定するところからはじまる小説です。さらに読んでいくと舞台は鈴鹿峠。花の季節には、その下を通るものは気が変になるため、みんな花の下から逃げようと思って一目散に走り出します。そこに登場するのが山賊。旅人の命を奪い、一緒にいた女をさらうという怖ろしい人物ですが、しかしそんな彼も桜の木を恐れていたのです。

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