2015年05月31日

安岡章太郎
『海辺の光景』
 (新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

日本を代表する作家として活躍され、一昨年の2013年1月26日に92歳で亡くなられた安岡章太郎さん。今回取り上げたのは安岡章太郎さんが39歳の時に発表された初期の作品で、野間文芸賞と芸術選奨を受賞している小説「海辺の光景」です。海辺と書いて「かいへん」と読み、物語の中に安岡さんのふるさと高知湾の海辺の光景が出てきます。はじまりは海辺に沿った道を、父「信吉」と息子「信太郎」が乗った小型のタクシーが走っている場面です。二人が向かっているのは、信吉の妻で信太郎の母が入院している病院。容態の悪くなった彼女は彼らが駆けつけた9日後に亡くなっていて、付き添って看取るまでが描かれています。

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