2015年08月16日

車谷長吉
『赤目四十八瀧心中未遂』
 (文春文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今年の5月17日、作家の車谷長吉さんが69歳で亡くなりました。代表作は1998年に直木賞を受賞した「赤目四十八瀧心中未遂」。2003年に映画化され話題になった小説です。「赤目四十八滝」は三重県に実際にある滝。その名前だけでも恐ろしい響きがありますが、そこに心中未遂とつくとさらにインパクトがあります。そして実際に読んでみても題名から受ける第一印象を裏切らない内容。書き出しの数行だけで作品の中に引きずり込まれてしまいます。物語の主人公は生島与一という男。東京で会社勤めをしていましたが、放浪の末にたどりついたのが兵庫県の尼崎。この町のアパートの片隅で焼き鳥の串を刺す仕事をすることになるのです。

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