2016年1月3日

渡辺淳一
『花埋み』
 (新潮文庫)

明けましておめでとうございます。心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

2016年最初に取り上げたのは渡辺淳一さんの小説「花埋み」です。渡辺淳一さんというと、日本の文学界を代表する作家で、「失楽園」のような恋愛小説が浮かびますが、医療に関する小説や評伝も数多く発表されています。その中から選んだのは1970年の作品「花埋み」。日本で最初の女医である荻野吟子の生涯を描いた小説です。時代は明治のはじめ。主人公の「ぎん」は嫁ぎ先から北埼玉にある実家に戻ってきていました。その理由はひどいもの。夫から淋病をうつされたためだったのです。当時は治るのも難しく、この病気にかかると子供が産めなくなるとも言われ、結局「ぎん」は、離縁されて実家に戻ってくるのです。

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