2016年1月31日

タミ・シェム=トヴ
『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』

 (岩波書店)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

1月27日は、アウシュヴィッツが解放された日。それにちなんで今年選んだのは、イスラエルの作家タミ・シェム=トヴの「父さんの手紙はぜんぶおぼえた」です。ナチス・ドイツがオランダを占領していた1940年代のはじめ、家族と離れ離れに暮らしていたリーネケというユダヤ人の少女がいました。彼女の心の支えとなっていたのは、遠く離れて暮らす父さんからの絵手紙です。この本はその手紙とリーネケの記憶をもとに、作家タミ・シェム=トヴがまとめた実話になっています。ではその手紙は過酷な時代を越えてどうやって残されたのか?実はリーネケを預かっていた村のお医者さん、ドクター・コーリーがリーネケにその手紙を見せたあと土の中で保管し、戦後リーネケに返していたのです。

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