2016年3月6日

長田弘
『詩の樹の下で』
 (みすず書房)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

東日本大震災から今年で5年。メロディアス・ライブラリーでは、文学が小さな希望のひとつになればと願いながら、毎年、本を選んでいます。今年、取り上げたのは長田弘さんの詩集「詩の樹の下で」。長田弘さんは日本を代表する詩人で福島市のご出身。今回選んだ詩集には、生まれた場所・福島への想いが込められています。もともと長田さんがこの詩集を作ろうと思われた時、心に描いていたのは幼少期に育った森や山の風景。そこから1本1本の樹の記憶をたぐりよせて詩を書くことで「幸福の再確認の書」にしたいと思われていました。ところがそこに起きた東日本大震災。「幸福の再確認」ではなく、出来上がった詩集の言葉には「祈り」が込められていました。

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