2016年4月17日

室生犀星
『蜜のあわれ』
 (講談社文芸文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今、映画も公開中の「蜜のあわれ」。昭和34年、室生犀星が70歳の時に発表した小説です。読み始めると何から何まで驚かされる作品。まず小説全体がすべて会話で成り立っています。戯曲でもないのに登場人物の会話だけが続いていき、その会話も70歳の男とある少女によるもの。二人の話している内容を読むとそれぞれの人物像が見えてきます。男は作家で、少女に「おじさま」と呼ばれています。そしてその少女はなんと金魚の化身。金魚なのに「おじさま」にお金をねだったりするのです。70歳の男と少女という設定ですが、生身の少女ではなく金魚にしたことで、ちょっとエッチでユーモアを感じる内容になっています。

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