2016年5月22日
町田康・訳
『宇治拾遺物語』
 (河出書房新社)

「宇治拾遺物語」は、「今昔物語」と並んで昔から伝わる説話集の代表的なもの。「説話」というのは「人々の間で語り伝えられた話」ですが、平安時代に成立した「今昔物語」は「仏法礼賛」をベースに人の生と死、そこから人間とは何かを追求しています。一方、鎌倉時代に成立した「宇治拾遺物語」はもっとゴシップ的。このことについて作家の池澤夏樹さんはこんなふうに分析されています「今昔物語の時代からおよそ百年たって成立した「宇治拾遺物語」がよりゴシップ的になっているのは、社会の都市化が進んで、噂というメディアの力が増したからか…」。鎌倉時代の噂話は現代の言葉で読むと、より生き生きと伝わってくるのです。

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