2016年8月7日
朽木祥
『八月の光』
 (小学館文庫)

短編集「八月の光」の最初に掲載されているのが「雛の顔」。原爆が落ちた当日、勤労奉仕を休んだことで命拾いをした真知子という主人公。しかしその後、結局、命を落とすことになってしまいます。また「石の記憶」という作品では、広島平和記念資料館に展示されている「白い石段の影」にまつわる物語が描かれています。「水の緘黙」では、原爆投下後の町で、苦しむ人を助けられなかった青年の自責の念が綴られています。やがてその青年は何をきっかけに救われていくのでしょうか?戦時中であってもそこには人々の暮らしが続いていた広島。しかし一瞬でそのすべてを奪ってしまったのが原爆です。「八月の光」は、そこにいた人々の想いをすくい上げるように、ひとつひとつ丁寧に描かれている短編集です。

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