2016年8月21日

三島由紀夫
『命売ります』
 (ちくま文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

三島由紀夫というと、「金閣寺」や「潮騒」など日本文学を代表する作品を数多く残していますが、しかしそれだけではありません。今回取り上げたのは、昭和43年に週刊プレイボーイに連載されていたエンターテイメント小説「命売ります」。文庫本の帯には「隠れた怪作小説発見。これを読まずして三島を語るべからず」と書いてあります。「命売ります」というタイトルのとおり、主人公の男「羽仁男」が新聞の求職欄に「命売ります。お好きな目的にお使い下さい」と広告を出すところから物語がはじまります。ではなぜ自分の命を売ろうとしたのか。実は自殺しようとしたが死にきれず、どうせ死のうと思っていたのだからと、この不思議なビジネスを思いつくのです。

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