2016年9月25日

町田康
『夫婦茶碗』
 (新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

5月に古典文学「宇治拾遺物語」を取り上げた時、その現代語訳を担当されていたのが作家の町田康さん。その独特の翻訳の世界によって、新しい古典の魅力を感じることが出来ました。そこで今回は町田康さんの小説を味わってみることに。選んだのは代表作のひとつ「夫婦茶碗」です。1998年に刊行された初期の作品。題名のとおり登場するのはある夫婦。そして語り手は夫である「わたし」です。しかしこの「わたし」。頭の中に言葉がうずまき、実際に語られていることが本当なのか妄想なのかわかりません。しかしこれがまさに町田ワールド。読めば読むほど妄想のような世界から読者も抜け出せなくなっていきます。

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