2017年3月19日
江戸川乱歩
『人間椅子』
 (角川ホラー文庫)

小説「人間椅子」は「苦楽」という文芸雑誌で発表されましたが、編集長である川口松太郎の依頼で新しい小説のアイデアを考えていた時、江戸川乱歩は籐椅子にもたれながら、目の前のもう一客の椅子を睨んで「椅子椅子」とつぶやいていたそうです。そのうちに人間がしゃがんだ形と椅子がダブって見えたとか。またこの物語の着想を得た後、大きな肘掛け椅子を家具店で見かけた乱歩は、いきなり店に入り「この椅子の中に人間が隠れられるでしょうか?」と店員さんに聞いたそうです。奇抜なアイデアと、リアリティの融合を常に考えていた江戸川乱歩。ごく平凡な日常の風景も、この作家の手にかかると予想もしない非日常になっていきます。

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