2018年3月25日

義経千本桜(いしいしんじ訳)
(池澤夏樹=個人編集日本文学全集/河出書房新社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

江戸時代の中期は、人形浄瑠璃の黄金期と呼ばれ、多くの観客が劇場に足を運んでいました。人気の演目のひとつが「義経千本桜」。大阪の竹本座で活躍していた浄瑠璃作者・竹田出雲、三好松洛、並木千柳の合作によって生み出された物語です。270年近く愛され続けている舞台の名作を、今回は作家いしいしんじさんの現代語訳で味わってみました。最初に登場するのは源義経。源平の合戦で源氏が勝ち、その報告をするために、武蔵坊弁慶を連れて、後白河法皇の御所にやってきました。法皇はその褒美として義経に「初音の鼓」を与えます。しかしそこには鼓の両面を兄弟になぞって、兄である源頼朝をうてという意味が込められていました。

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