2022年9月18日

幸田文
『木』
(新潮文庫)

「えぞ松」「ひのき」「杉」「ポプラ」「藤」など草木をテーマにした幸田文さんの随筆集「木」。会いたい「木」の風景があると情熱的に出かけ、普段の暮らしの中にも花があり、それを愛でて慈しむ幸田文さんの姿が映し出されています。「どういう切掛けから、草木に心をよせるようになったのか」、こう聞かれた幸田文さんは、子供の頃の出来事を綴っています。父・幸田露伴が娘たちに「木の葉のあてっこ」をさせ、それが得意だったお姉さんを父親が喜び、妹だった幸田文さんは嫉妬していたそうです。その文章の中からリアルに伝わってくる親子、姉妹の関係性。草木をとおして深く人間を描き出す幸田文さんの才能は、まさに父・幸田露伴から受け継いだものなのではないでしょうか?

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