辻仁成
こんにちは、辻仁成です。僕の好きな映画ベスト3は『ハズバンズ』『チャンス』『わらの犬』の3本です。

※ 辻仁成さんの監督作『TOKYOデシベル』、5/20(土) 公開!



『ハズバンズ』

製作:1970年(アメリカ) 監督:ジョン・カサヴェテス
出演:ベン・ギャザラ/ピーター・フォーク/ほか


インディペンデント映画の代表的な監督、ジョン・カサヴェテスの個人的最高傑作がこの映画。男の友情を描いた映画なんですが、仲間のひとりが急に死んでしまい、残った3人の男たちが葬式の後、家に帰らずイギリスへ遊びに行くんです。友達を亡くした哀しみが男たちを引きつけ、彼らは酔っ払って遊ぶだけなんですが、とても良い映画でした。
−映画評論家の清水節さんが解説−
この映画はあらすじをお話しても魅力的に聞こえるかどうかは微妙でしょう。むしろポイントは「なぜカサヴェテスという監督はこういう映画を撮ったのか」です。
かつて映画は大きなスタジオが作るもので、必ずドラマ性があり、それを俳優が演じ、職人たちが撮るものでした。ところが50年代の後半、技術革新によって撮影や録音が簡単にできるようになります。さらに『エデンの東』でジェームズ・ディーンが登場して、リアルな演技も追求されるようになりました。こうした時代背景の中、ジョン・カサヴェテスは自分でお金と仲間を集めて、1959年に初のインディペンデント映画を撮ったんです。
ほぼ同じ時期にフランスでヌーヴェルヴァーグという映画の潮流を作ったゴダールは、論客としても優れていたこともあって世界的に有名ですが、カサヴェテスはそうはなりませんでした。しかし、その功績から現在は「インディペンデント映画の父」と呼ばれています。この映画はそんな監督の作品です。


『チャンス』

製作:1979年(アメリカ) 監督:ハル・アシュビー
出演:ピーター・セラーズ/シャーリー・マクレーン/ほか


この映画の主人公はチョンシー・ガードナーという庭師の男。彼はずっとテレビしか見ていなかった男なんですが、テレビのセリフを喋り続けている内に、あれよあれよと大統領候補になっていくという、すごく不思議なお話です。初めて観たときにかなりショックを受けたのを良く覚えています。
−映画評論家の清水節さんが解説−
この映画はある邸宅で庭師として仕えている男が主人公。その男は庭師として仕事をする以外はテレビを見ることくらいしかすることがなかったこともあり、ちょっと世間とは感覚がズレている少し変わった男です。
ところがある時、主が亡くなってしまい、男はその邸宅を出なければならなくなります。そしてある事故をきっかけに大金持ちと知り合いになるのですが、どんなことでも庭木にたとえて話す癖がやけに含蓄ありげに聞こえたせいで、彼はとんとん拍子に出世。ついには大統領選に出馬することに……というお話です。
こんなあらすじだけを聞くとファンタスティックなお話のようですが、そこには現代の文明を風刺するようなニュアンスが込められています。ネットのフェイクニュースが信じられてしまう現代にも通じるテーマを感じさせる映画です。


『わらの犬』

製作:1971年(アメリカ) 監督:サム・ペキンパー
出演:ダスティン・ホフマン/スーザン・ジョージ/ほか


小学校5年生の時に生まれて初めて映画を観たのがこの作品でした。そしてその時「映画監督になりたい」と思ったんです。非常に暴力的な映画で、小学生の僕は「大人の世界って怖いな」と思いながら、ついにその世界へ足を踏み入れるきっかけになった映画です。
−映画評論家の清水節さんが解説−
この映画のタイトルは、老子の「天地は無情で人間や生き物をわらの犬のように扱う」という言葉に由来しています。
主人公のダスティン・ホフマンは数学教師。暴力的なアメリカに嫌気がさして、奥さんの実家であるイギリスに引っ越します。ところが引っ越したイギリスでもっと酷い目に遭ってしまい、暴力を否定していた男の胸の内にものすごい暴力衝動が起こる……というお話です。
サム・ペキンパーは1970年代にバイオレンスの巨匠と言われ、暴力描写で彼の右に出る者はいないとされた監督でした。そんな監督が「人間は普遍的に暴力性を持っていて、それがいつ何をきっかけに噴出するか分からない」というテーマを、ものすごいバイオレンス描写で描いた名作です。



清水節
■ 清水節(しみず・たかし)
1962年東京生まれ。編集者・映画評論家・クリエイティブディレクター。映画雑誌「PREMIERE」他を経て、映画情報サイト「映画.com」「シネマトゥデイ」他で執筆。著書に「スター・ウォーズ学」「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」他。テレビやラジオ、イベント等での解説や、ドキュメンタリー番組の企画制作も手掛ける。
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