ON AIR REPORT オンエアレポート

ベートーヴェンプラスVol.4 直前スペシャル2

17/09/04


今夜もお聴きいただきありがとうございます!
9月23日、東京オペラシティコンサートホールで行う横山幸雄ピアノリサイタル<ベートーヴェン・プラスVOL4>。この番組を聴いておでかけいただければ演奏を聴く楽しさ倍増のはず!です。

今回は、「月光」や「テンペスト」といった30代に書かれた作品を中心に演奏します。30代になったベートーヴェンは、作曲家として一大転機を迎えます。20代後半から現れ始めた耳の病の兆候がどんどん悪化していき、32歳では遺書をしたためます。しかし、その絶望を乗り越えた後、次々と傑作を生み出していくようになります。まさに30代からの十数年間はベートーヴェンの創作の絶頂期と言って良いでしょう。今回は、その時代の傑作の数々と、それに「プラス」して、音楽史上の代表的な「幻想曲」も演奏します。今日は、第2部、第3部で演奏する曲から選びました。

<今夜のプレイリスト>
M1 ベートーヴェン 《ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」》より 第3楽章/横山幸雄(ピアノ)(2013年ベートーヴェン・プラスVol1ライブ録音)
M2 ベートーヴェン 《ピアノ・ソナタ第16番》より 第1楽章/横山幸雄(ピアノ)(CD『ベートーヴェン12会』)
M3 ベートーヴェン 《7つのバガテル》op.33より 第1番/横山幸雄(ピアノ)(CD『ベートーヴェン12会』)

M1「テンペスト」は・・
1802年の作曲。ベートーヴェン32歳。「テンペスト」のタイトルはベートーヴェン自身によるものではありません。身の回りの世話をしていたシンドラーが、あるとき、「この作品はどのように解釈したらよいのですか?」と17番のソナタについてベートーヴェンに尋ねると、「シェイクスピアの「テンペスト」を読め」と言った、というもの。長らくこの話を含む、シンドラーのベートーヴェンに関する逸話は信じられてきましたが、現在ではその逸話や記録の多くは、シンドラーの捏造とされています(有名な「運命」エピソードも)。
しかし、シェイクスピアの「テンペスト」は船が嵐に巻き込まれるシーンにより開幕する戯曲で、第3楽章は「嵐」のイメージとぴったりな曲想であり、「テンペスト」の愛称で親しまれる所以となっています。

1802年の10月、ベートーヴェンは「ハイリゲンシュタットの遺書」をしたためます。その一部をご紹介すると・・「・・・医者の言葉に従って、この半年ほどは田舎で暮らしてみた。皆、遠くの笛の音が聞こえるのに、私には何も聞こえない。人には羊飼いの歌声が聞こえているのに、私にはやはり何も聞こえないとは、何と言う屈辱だろう。こんな出来事に絶望し、あと一歩で自ら命を絶つところだったが、私を引き止めたものは、ただひとつ“芸術”であった。私の使命である仕事(作曲)をやり遂げないで、この世を捨てるのは卑怯ではないか。その為、このみじめで不安定な肉体を引きずって生きていく。」という内容です。遺書というよりは、芸術のために生きていく決意表明と感じられます。

そして、M1の「ピアノソナタ17番テンペスト」、ウイットに富んだM2のピアノソナタ16番、クロイツェルソナタや、交響曲第3番「英雄」など傑作が怒涛のように生まれています。
M3にお送りした「7つのバガデル」は、ベートーヴェンも箸休め、実験的に作曲したのではないかと横山さん。
リサイタルでは同じ第2部に演奏される<2つの前奏曲>は、もっと若いときの作品ですが、作品番号は、39。正式には「12の長調にわたる2つの前奏曲」といい、曲の最初と終わりはハ長調ですが、なんとその間にすべての長調を経由するという仕掛けになっています。ベートーヴェンのピアノ作品の中でも非常にユニークなものといえるでしょう。

今回の「ベートーヴェン・プラスVol.4」では、人生を表すようなドラマティックで悲劇的な作品もある一方で、ユーモアや明るさが目立つ作品もあり、ベートーヴェンの人間らしさを十分に感じてもらえるのではないかと思います。

リサイタルは、9月23日(土)10時30分~16時30分ごろまで全5部構成です。(詳しくはインフォメーションのバナーから)