ON AIR REPORT オンエアレポート

眠れないあなたにも・・ピアノの子守歌〜12月20日は世界こどもの日

17/11/20


今夜もお聴きいただきありがとうございます。

11月20日は「世界こどもの日」。1954年に国際連合(国連)が、子どもの権利を尊重し、成長を祝うことなどを目的に制定した記念日で、国際デーの一つです。

「こども」というキーワードにつながる音楽作品にはいろいろあります。こども(初心者)のために書かれた教育的な作品、こども時代を回想したもの、子どもの遊ぶ様子を描写的に描いた作品、こどもをモティーフにしたもの、こどもが親しみやすい作品、筋書きがあるもの、あやすための歌など ・・・民謡からオーケストラ作品まで幅広くありますが、今夜は、ピアノのために書かれた「子守歌」に注目しました。

<プレイリスト>
M1 ブラームス 《子守歌》/イエルク・デーム(ピアノ)
M2 ドビュッシー 《子供の領分》 より 第2曲<象の子守歌> / 横山幸雄(ピアノ)「Voyage三鷹リサイタル・シリーズVol.4」 (2012年10月7日)の録音
M3 シューマン 《アルバム・ブレッター》op.124より<子守歌>/ シプリアン・カツァリス(ピアノ)
M4 シューマン 《アルバム・ブレッター》op.124より<小さな子守歌>/ シプリアン・カツァリス(ピアノ)
M5 ショパン 《子守歌》 / 横山幸雄(ピアノ)「入魂のショパン2016」(東京オペラシティコンサートホールでの録音)

有名なブラームスの「子守歌」は、1868年、ブラームスがハンブルクで女性合唱団を指揮していた時のメンバーで、特に親しかったベルタ・ファーバーに次男が生まれたことを聞き、お祝いとして作曲されました。

43歳ではじめて子供に恵まれたドビュッシー。1908年に書かれた『子供の領分』(全6曲)は、一人娘(シュシュ)に献呈された曲集。楽譜の冒頭には「あとに続く者へ、父親のやさしい言い訳を添えて、私のかわいいシュシュへ」という献辞が書き記されています。「象」というのは、シュシュが愛用していた象のぬいぐるみのことで、それを抱きながらいつの間にか眠ってしまう様子を表した作品と言われています。

《アルバムブレッター》は、1832-1845年にわたってシューマンが書きためた小品を集めて出版された曲集です。 全体の作曲年が長期間にわたっているため、曲集としての統一性はあまり感じられませんが、シューマンらしい叙情性や幻想的な美しさを漂わせている全20曲。<子守歌>(16曲目)はシューマンに長女が誕生した1841年の作品。<小さな子守歌>(6曲目)は1843年、シューマンの次女が誕生した年に書かれています。
1冊の曲集に纏めて出版されたのは、シューマンが入院する前年。精神的に極限状態にあった時に、幸せに満ちた頃を思い出していたのかもしれません。

ショパンの「子守歌」は、 1844年頃の作曲。ショパンのピアノの弟子で音楽的な交流も深かった、名オペラ歌手ポーリーヌ・ヴィアルドの娘ルイーズから着想を得た作品です。 演奏旅行に多忙だったポーリーヌはサンドとショパンに、生まれて18ヶ月になるその娘ルイーズを預けました。ショパンはルイーズをルイゼットと呼んで可愛がり、またルイーズも大変ショパンになついていたと言われています。

厳選された音の、シンプルな作品が多いピアノのための「子守歌」。こどものイメージにインスピレーションを受けて生まれた作品、静謐なイメージがあります。大人がきいても、ほどよく眠たく、心おだやかになったのではないでしょうか、と横山さん。